第488話 この私に抜かりはない
「それでは、参りましょう」
ネヴィラお姉様にサイラスとガイル達と話す事、約30分くらいかな?
「は〜い」
ファナに返事をしつつ、ファナとルーちゃんを引き連れて馬車を降りる。
2人とネヴィラお姉様にも卒業記念パーティーのための準備が必要だろうし、先に行ってもらって更に待つ事10分ほど、やっと私がお城の控え室に入る順番が回ってきたわけだけど……
「むふっ」
「ご主人様、ご機嫌そうですね」
「まぁね」
なにせ……今日は私にとっても待ち望んだ日!
もうすぐセドリックとの仮婚約から解放されると思うと、機嫌も良くなるというもの!!
それにサイラスとガイルが、セドリック達を見限ってこっちについた。
これが意味する事はつまりっ! 前世の記憶にある乙女ゲームは変えられるという事!!
まぁ前世の記憶にある乙女ゲームは、レフィーちゃんが教えてくれた、私が辿るだろう未来の中でも可能性の高い未来。
だから私や周囲の行動次第で、如何様にも変わるし変えられるのはわかる。
つまりはアレだ、バタフライ効果ってやつだ。
ん? ちょっと違うのかな? う〜ん、まぁとにかくっ! これはつまり幼い頃から私がやってきた事は無駄じゃなかったって事だもんっ!!
「それに……」
サイラスとガイルのおかげで、セドリックの計画に変更がない事も改めて確認する事ができたし。
これから起こるだろう事を想像すると……
「むふふっ」
せいぜい今はいい気になっているがいいわ!
セドリックもエマも、首を洗って待ってなさい。
「ヤツらには孤高の悪役令嬢であるこの私、ソフィア・ルスキューレを敵に回した愚かさを教えてあげるわっ!!」
「おぉー」
パチパチパチパチ
相変わらずの無表情だけど……ルーは娘みたいなものだし、長年の付き合いの私にはわかる。
ルーが拍手をしつつ、しっかりと共感して感心してくれてるという事がっ!
「ルー、お嬢様を煽らないでください」
「わかりました」
あっ、ルーが拍手するのをやめちゃった。
「それにお嬢様……お気持ちはわからなくもないですけど、今はまだ公爵令嬢に相応しいお振る舞いをしてください。
変な笑い声を周囲に聞かれたらどうなされるんですか」
「むっ!」
ファナったら失敬な。
誰が変な笑い声よ、誰がっ!
それに万が一、百歩譲って私が変な笑い声をしてたとしても……
「ちゃんと周囲に遮音用の結界を張ってるから問題ないわ」
この私に抜かりはないのである!
それに……私は人類最強の一角たるSランク冒険者にして、到達者へと至りし者。
セドリック達を迎え撃つ準備は万全に整えてるけど、ここは敵の本拠地ともいえる王宮の中だし油断はない。
現に実は今も周囲……というか、この王宮内全ての様子は完璧に把握しているのだっ!!
私にかかれば王宮内全域に魔力感知を張り巡らせる事容易にできるし。
その気になれば風や音、空間魔法とかを駆使して、離れた場所での会話を聞くことすらできる。
つまり最早この王宮の中で、私に隠し事はできないと言っても過言ではないのである!
子爵位までの下位の貴族達は既に会場入りしてるみたいだけど……
『皆様は先日の噂を耳にしましたか?』
『先日の噂というと、世界会議が行われたレフィア神聖王国の?』
『勿論です。
Sランク冒険者達が何者かと戦ったのでしょう?』
『私が聞いた話では、なんでも天使や悪魔。
そして神々までご降臨なされたとか』
『最終的にはレフィア神聖王国の王都にいた、その一件を実際に目撃した王侯貴族を含めた全ての人物が眠りに落ち、目が覚めたら時には全てが終わっていたらしいですよ』
『まさか! ただの眉唾では?』
『ですが、王都のすぐ側には天変地異が起こったような激しい戦闘の跡が残っていたとか』
『その一部始終を一般の平民達よりも少し早く目覚めたSランク冒険者達は見ていたそうで。
彼等の証言によると、それはそれは凄まじい神々の戦いが繰り広げられた結果なのですって』
とまぁ、会場はレフィア神聖王国で起こった一件の話題で持ちきりみたいね。
「会場でも私達の話をしている者は皆無だし大丈夫!」
「はぁ……」
ファナに呆れたような感じでため息を吐かれちゃったけど、細かい事は気にしない!
それよりも……今からセドリック達がどんな顔をするのか楽しみだわっ!!
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