第450話 私、登場!

「これは……」


 真っ白な翼を広げた天使を引き連れ、天から大地を見下ろす女神アナスタシア。



「「「「────!!!」」」」



 王都もかなりの騒ぎになってるみたいだけど、それも無理はない。

 だって……私ですら唖然としちゃうような、神聖を絵に描いたような光景だもん。


 目の前で神話とか、物語とかで語られるような光景が繰り広げられているわけだし!

 王都中が! この光景を目にしている人々が、大騒ぎになるのも当然というもの!!


 とはいえ! この程度なら私もやろうと思えば、このは簡単にできる!!

 ぶっちゃけ光属性魔法か神聖属性魔法で、光を背負って頭上から見下ろすだけだし。


「けど……なんだろう、この感覚」


 本来なら自然と平伏したくなるような神々しい光景なんだろうけど……ゾワゾワって不思議と背筋が凍るような、めっちゃ不吉でイヤな予感がするんですけど!!

 と、とりあえず! 王都の人達の反応は……



「女神アナスタシア?」


「聞いたことないけど……」


「誰なのかしら?」


「真の神って、なんの話なんだ?」



「っ〜!!」


 これって……ま、まずい!

 いやまぁ、王都の人達……っていうか、この世界の大多数の人達にとって、400年前の聖魔大戦の話は常識。


 それに神様といえば魔法神ティフィア様なわけだし。

 こんな反応になるのも無理はないかもだけども、この反応はよろしくないんじゃ……!!


「ふっ、ふふふふっ!」


「ア、アナスタシア様……?」


 怖っ!

 急に女神アナスタシアが笑い出したんですけど! それも爛々と目を光らせて!!


 さすがのミカエルや、他の天使3人もちょっと困惑気味だし。

 なにあれ! めっちゃ怖い!!


「私を……この世界の主神にして、正当なる神であるこの私を知らないっ!!

 うふっ! そうですか……それほどまでに時間が経ってしまったのですね」


 今度は悲しそうな、悲哀を浴びた表情に……


「時間の流れとは、なんと残酷なものなのでしょう。

 私の愛しく可愛い、親愛なる人々が……あの子の手によって、これほどまでに腐敗し、堕落してしまうだなんて」


「アナスタシア様……心中、お察しいたします」


 悲しむ主人を慰める配下。

 一見しただけじゃあ美しき主従愛の光景に見えるけど……イヤな予感が止まらない。


「いいのです。

 これは仕方ない……事なのですから」


「っ!!」


 今度は急に、ストンっと表情が抜け落ちたっ!

 情緒不安定にも程があるでしょ!!


「しかし……あんな彼らを見るのは辛い。

 せめて私の手で、腐敗し堕落してしまったあの子達を終わらせてあげるとしましょう」


 やっぱりっ!


「イヤな予感が的中したっ!!」


 あの子達を終わらせるって、いったいなにをする……



 ────ッ!!



 天から降り注ぐ金色の光がその強さを増して!

 それにこの大気を震わせ、大地を揺らす……世界そのものを歪めるような、圧倒的な魔素エネルギー!!


「まさか……」


「うふふっ! 安心してくださいね。

 私がすぐに救ってさしあげましょう!!」


 王都を丸ごと吹き飛ばすつもりなのっ!?

 早く止めないと!


「神能」


 この魔素エネルギーの膨れ上がり……ヤバいっ!


「美徳ノ帝」


 金色の光が天を覆い尽くし……


「あれ?」


 急に光が消えて……


「私の神能による浄化が掻き消された?

 これはまさか……」


「ふふ〜ん!」


 えっ、この声は……


「私、登場!」


「レフィーちゃんっ!?」

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