第449話 降臨

 いやまぁ封印されていたとはいえ女神アナスタシアは、正真正銘の超越者!

 神へと至った存在なわけだし、なんの前兆もなく転移できることはわかる。


 こっちの大陸の常識、世界最高の魔法研究機関として名高いオルガマギア魔法学園でも、そんなことは不可能とされているんだけど……悪魔王国の人達は普通にやってるし。


「ルミエ様、ガルスさん、フィル、エレンお兄様……」


 今更なんの前兆もなく、転移で目の前から消えた程度で驚きはしない。

 問題なのはそんな事じゃなくて……!


「これって、まずいんじゃないですかっ!?」


 問題なのは! どこか不穏な、狂気に狂ったようなっ!

 乙女ゲームでの私みたいな雰囲気を纏った女神アナスタシアが、彼女に従順な天使ミカエル達を引き連れてどこかに……


 おそらく、というか十中八九、近くにある最も大きな都市。

 つまりは四大国が一角にして、ネフェリル帝国と並んで超大国と称されるレフィア神聖王国が王都レ・フィーアに。

 世界会議が行われている場所に向かったという事実っ!!


「早く戻らないとっ!!」


 女神アナスタシアは、真の神が戻ったことを教えに行くっていってた。

 けど……ぶっちゃけ、今の世の中に女神アナスタシアの事を知っている人なんて皆無!!


 それにもし現在この世界で広く信仰されている神が、400年前に自身を封じた魔法神様だと知れば?

 人々が女神アナスタシアのことを、認めなければ……何事もなければそれが一番いい。


 でも……乙女ゲームでの私にも似た、あの狂気に狂ったような特異な雰囲気。

 きっとまずいことになる!

 最悪の場合は……


「っ〜!!」


 私を信仰しない人間なんて必要ないって、人類を皆殺しにしようとする可能性も!!


「ま、ままままずい!!」


 長年の封印で弱体化してるらしいけど、それでも女神アナスタシアはかつてこの世界の主神として君臨していたという超越者。

 暴走した神を食い止めるとか、どんな難易度っ!?


 ミカエル達と戦って周囲に甚大な被害を出すくらいなら、ミカエル達の要求を飲んだ方がいいって判断したけど……もし女神アナスタシアと敵対することになれば、その被害は想像もできない!!


 しかもミカエル達は主人である女神アナスタシアに従順だし、そうなったら確実に結局ミカエル達とも戦うことになるっ!

 やっちゃった……私があの時、ミカエル達の提案を飲むって判断したせいで……!!


「ソフィー、まずは落ち着いて」


「そんなこと言われたって!」


 というかなんで逆にルミエ様とガルスさんは、そんなに落ち着いているのっ!?

 私を見てニマニマしてるエレンお兄様はいいとして、フィルもそこまで焦ってはないみたいだし。


「奴らを追うのは賛成だけど、そんなに焦る必要はないわ……おそらくね」


 焦る必要はない?


「それって……」


「とりあえず、王都まで戻るわよ」


 瞬間──一瞬で視界が切り替わる。

 さっきの女神アナスタシアと比べても遜色ないレベルの転移魔法、さすがはルミエ様だけど……


「っと、この手際の良さ。

 流石は我らが姫君だな」


「茶化さないでくれるかしら?

 それよりも……」


 ルミエ様の……私達の視線の先。


「私の名前はアナスタシア」


 天から淡い金色の光が降り注いで大地を……王都レ・フィーアを神聖な光が包み込む。


「この世界の真の神にして主神です。

 長きに渡って悪き者の手によって囚われの身となっていましたが……私の愛しい子達よ、不安になる必要はありません。

 これからはこの世界の正当な主神である私が、再びこの世界を、皆さんを魔法神を騙る悪き者から守りましょう」


 4人の天使を引き連れて……神が、女神アナスタシアが降臨した。

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