第446話 解放
「忌々しき魔神の加護を授かりし者……特異点たる愛子の血液を贄に捧げる!」
ゆっくりと私の血が入った注射器が浮かび上がり……
パリィッン!
なにやらずっと
そして私の血だけが空中に浮かんで、徐々に円形に……魔法陣を作り上げ……
「さぁ……開け、閉ざされし世界の扉よ!
渡界の神儀、発動──」
────ッ!!!
はっきりと聞こえたわけじゃないけど、ミカエルが発動って言った瞬間、確かに聞こえた気がしたんですけど。
なにかが……巨大な結界かなにかが砕け散ったかのような、悲鳴のようにも聞こえる耳障りな音が。
「なに、今の……フィル」
「さぁね、俺にもなにかはわからない。
でも……確かに聞こえたのは間違いないよ」
「あぁ、俺にも聞こえたぜ」
フィルとエレンお兄様もこう言ってるんだから、さっきのが幻聴でなかった事はまず間違いない!
でも、あれはいったい……
「ふふっ、ソフィー達が知らないのも無理はないわ」
「ルミエ様……」
「なにせあの音が世界に鳴り響くのは約400年ぶり、私も実際に聴いたのは初めてよ」
400年ぶり?
ルミエ様も初めて聴くって……
「あれは世界を隔てる次元の壁が……そしてお母様の封印が破られた音。
世界の悲鳴みたいなものよ」
「っ!!」
世界の悲鳴っ! いやそれよりも、世界を隔てる次元の壁と魔法神ティフィア様の封印が破られたって!?
それって大丈夫なのっ!!?
い、いや、落ち着け、落ち着くんだ私!
「すぅ〜、はぁ……」
もともとミカエルは閉ざされた世界に封印されている、女神アナスタシアを解放しようとしてたわけだし、そのために私の血液が必要だったわけだもんね。
そりゃあ儀式に成功すれば、世界を隔てる次元の壁? とかに穴が空いて!
さらには女神アナスタシアを封印していた、魔法神様の結界が破られるのは当然の事っ!!
そう、これはなにも想定外の事態でもなんでもない。
ただの予定調和! 予定通りの出来事に過ぎないのであるっ!!
よって、焦る必要はどこにもないのだ!
「これはマズイわね……」
「えっ?」
ル、ルミエ様?
「あぁ、ヤベェ事になったかも知れねぇ」
「へっ?」
ガルスさんまでっ!?
な、なにがそんなにマズイの? これって予定通りの流れじゃないの!?
「だが、今はそれよりもこっちだ」
「えぇ、そうね」
まったく話についていけてないんですけどっ!!
「来るぞ」
「来るってなに……」
────!!
「っ!!」
な、なにあれっ!? いきなりミカエルの前に黒い穴が……!!
「これは……」
黒い穴の向こう側から溢れ出す、神聖な雰囲気を感じさせる膨大な
「あぁ! 大変長らくお待たせしてしまいました……」
感激したような、歓喜に満ちた声音でミカエルが……4人の天使達が跪き……
「我らが真なる神」
黒い穴から──
「我らが主……女神アナスタシア様!!」
金色の髪をした美女が姿を現した。
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