第445話 ミカエルの力

「「「「「っ!!」」」」」


 ミカエルから放たれる、圧倒的ともいえるこの魔素エネルギーの奔流!

 なるほど、最高位天使である熾天使セラフィムだっていうのは伊達じゃないってわけね。


「しかし……」


 まさか、これほどまでとは……力を抑えてる事はわかってたし、あの教団のトップなんだから強いとは思ってたけど。

 これはちょっと想像以上、さすがにちょっとびっくりしちゃったわ。


 まっ! あくまでも、ちょっとだけだけども!!

 とはいえ、私の想像を超えていたのは事実だし、フィルとエレンお兄様も力を解き放ったミカエルを見て驚くのはわかるんだけど……ルミエ様とガルスさんまで息を呑んでいる?


「ふむ」


 確かにミカエルから放たれている魔素は凄まじい。

 けど……所詮はちょっと私の想像を超えていた程度。

 いかに最高位天使といえども、この程度なら悪魔王国にはいくらでもいる。


 そんな規格外達が集う国、まさに神の国である悪魔王国の中でも、ルミエ様とガルスさんの実力はトップクラス!!

 にも関わらず2人とも息を呑んで、それこそ私とかフィルやエレンお兄様以上に驚愕してるのはどうして?


「ガルス、聞いたかしら?」


「あぁ、しっかりと。

 チッ、くそっ! 一筋縄ではいかねぇだろうとは思っていたが、まさか野郎がこれほどの力を有しているとはな」


「これは流石に想定外だわ」


 なになに! なんの話!?


「むぅ〜、ねぇねぇフィル、エレンお兄様」


「なに?」


「どうした?」


「ルミエ様とガルスさんは、なんの話をしてるのかな?」


「さぁ、それは俺もわからないけど、おそらく……さっきミカエルが言っていた言葉。

 擬似神能ってやつの事じゃないかな?」


「まっ、だろうな」


「擬似神能?」


 そういえば、ミカエルが魔素を解き放つと同時にそんな事を言ってたような。

 確か……擬似神能・熾天ノ王だっけ?


「えぇ、フィルの言う通りよ。

 私達が驚いている……いえ、驚愕しているのは、ミカエルが擬似神能の保有者だったからよ」


 いつも余裕ある態度を崩さないルミエ様が、いつになく真剣なお顔と声音を……

 ガルスさんも真剣そのものの表情で、儀式を行なっているミカエルを見据えてるし。


「ルミエ様、その擬似神能っていったい……」


「擬似神能っていうのはね、他者の恩恵を受けて一時的に世界の理りから半ば遺脱した力。

 簡単に言ってしまえば時間制限ありのユニークスキル以上、神能以下の能力の事よ」


「なるほど……」


 わからん!

 でも私がルミエ様の説明を聞いても、よく理解できないのも仕方ないと思う。

 そもそも私は、神能ってのについても知らないわけだし。


「ふふっ、まぁこれだけ聞いてもわからないわよね」


「すみません……」


「気にする事はないわ。

 ソフィーは悪魔王国での訓練を通じて、既に神と呼ばれるようになる領域……超越者に限りなく近い実力を持っているとはいえ、まだ超越者には至っていない到達者だもの」


「まぁ、嬢ちゃんが神能なんてもんを知らねぇのも当然ってわけだ」


 そう言われると、なんかちょっと悔しいけど……確かに私は到達者よりさらに上の領域。

 超越者には至ってないから言い返せない!


「それで……その神能っていうのは……?」


「神能と呼ばれる力は、数多存在する神々の中でも強者のみが有する世界の理から外れた力。

 それが神能と呼ばれる力の事よ」


 つまりは……超越者へと、神と呼ばれる領域に至った存在の中でも、一部の限られた者だけが有する特別な力って事か。


「そしてミカエルが有する擬似神能は、一時的にとはいえその領域に足を踏み入れた力と……」


「その通りよ。

 私とガルスが驚いていた理由がわかってもらえたかしら?」


 それはもうバッチリと!


「はい、ヤバいじゃないですかっ!!」


 もしそんな力を隠し持っていたミカエルと、正面衝突していたら……当然! 負ける気は微塵もないけど、周囲への被害がどれほどのものになっていた事か。


「うんうん!」


 あの時にミカエル提案を受け入れる決断をした、私の英断を褒め称えたい!!


「っと、そろそろだぞ。

 お前ら気を引き締めろ」


 っと、そうだった。

 確かにミカエルのことも衝撃だけど、今はそれよりもガルスさんの言う通り気を引き締めないと!!

 なにせ……



「さて……鬼が出るか蛇が出るか」


 封印されし女神アナスタシアが復活するんだからっ!!

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