第442話 儀式を始めましょうっ!!

「ん〜!!」


 と、とりあえず! 一刻も早くここから……ルミエ様の腕の中から脱さねばっ!!

 くっ、なんて的確で完璧な抱っこの仕方なのっ!?


「んん〜っ!」


 この私が全力でもがいてるのに、脱出できないなんてぇー!!

 さすがはルミエ様ね、この私を涼しい顔……どころかめっちゃ嬉しそうな恍惚とした表情で押さえ込むなんて!


「ふふっ、仕方ないわね」


 あっ、離してくれた。

 ルミエ様の腕から飛び出て……優雅かつ軽やかに着地っと!


「さて……」


 これはさすがに、私がビシッと言う必要があるわね。

 ルミエ様とエレンお兄様はいつも通りとはいえ、ここは教団の総本部の真上!

 言ってしまえば敵地のど真ん中なわけですし。


 いくら変に緊張するくらいなら平常心でいたほうがいいといっても、さすがに2人とも気を抜きすぎている。

 フィルとガルスさんは、もう諦めちゃってる感じだし……ここは私がいくしかないっ!!


 みんなの! Sランク冒険者のリーダーとしてっ!

 私がビシッと一喝して、2人の気を引き締めさせてみせるっ!!

 そして……早く元の姿に戻してもらわないと!!


「ルミエ様! エレンお兄様!」


「ふふふ、なにかしら?」


「ソフィー、どうかしたのか?」


 2人してニマニマしてぇっ!

 私は怒ってるんですからね!?


「2人とも油断しすぎですっ!!

 協定を結んでいるとはいえ、ここは言ってしまえば敵地のど真ん中っ!

 なにがあるのかわからない場所なんですから、もう少し緊張感を持って事に当たってください!!」


 ふふん! どうよ、この堂々とした威厳ある態度!!

 私は伊達に若くして社交界で、名前を轟かせてはいないのだよっ!!


「威嚇してる子猫みたいで愛らしいわね!」


「なんかこう……手を引っ掻かれながらも、抱きしめたくなりますよね」


「……」


 こ、この程度でへこたれる私ではないっ!!


「こほんっ! と、とにかく、早く私を元の姿に戻してください」


 いつまでも子猫の姿だと、Sランク冒険者のリーダーとしての私の威厳が大変なことになりそうだし。

 なにより! これじゃあ話が一向に進まないっ!!


「うふふっ、もうソフィーったら仕方ないわね〜」


「でも、そんなわがままなソフィーもいいですね」


 えぇ……私は至って正当な要求というか、お願いをしただけなのに。

 なんで私の方が、やれやれって感じの視線で見られているわけっ!?


「むぅ」


 解せないわ……


「ほわぁっ!?」


 きゅ、急に身体が光って……おぉ〜、元の身体に戻った!!


「ふふっ、今の声を聞いたかしら?」


「しっかりと」


「っ〜!!」


 へ、変な声なんて出してませんからねっ!?


「そ、そんなことよりっ!」


 子猫の姿から元の姿に戻ったわけだし!


「早く儀式を始めましょうっ!!」


 そう! これ以上、生暖かい目で見られないためにも今すぐにっ!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る