第441話 キリッと

「……へ?」


 い、今なんて?

 さすがに聞き間違い……じゃないよね。


「では、ここが……」


 400年前の聖魔大戦で!

 ちょうど400年前にこの場所で……当時人類の英雄と呼ばれた者達と女神アナスタシア、そして魔法神ティフィア様との最終決戦が行われたって事っ!?


 私とルミエ様が初めて出会ったここが、伝説とか神話に語られる場所で。

 なおかつ事あるごとに敵対してきた宿敵とも呼べる存在である、教団こと光の使徒の総本部の真上って!!


「マジですか」


「ふふっ、少しは驚いていただけたようですね」


「っ!!」


 わ、私としたことが、敵の前で動揺を露わにしちゃうなんてっ!!

 ま、まずい! 何とかしてクールでカッコいい、Sランク冒険者〝白銀〟ソフィー様のイメージを保たなければ!!


「こほん……別に驚いてなんていません。

 私は伝説の英雄達と並んで、人類最強の一角と称されるSランク冒険者を束ねる者ですよ?

 この程度のことで驚くはずないではありませんか」


 ふっ、完璧だわ!

 これで私がびっくりしてたという事実はなくなった!


「うふふっ! 必死に弁明する姿も……!!」


「最高ですね」


 だ、誰がなんというとも、なくなったのだっ!!


「あはは……」


「ったく、本当にテメェらは……」


 ルミエ様とエレンお兄様をみて、フィルとガルスさんが呆れてるけど。

 そんなのは私には関係ないことなのである!


「しかし……」


 ちょうど400年前、今では伝説や神話に語られる聖魔大戦の最終決戦が行われた場所。

 そして大陸を巻き込んだ大戦が終結した場所、そんな場所に今まさに立っていると考えると……


「感慨深いですね」


 っと、まぁ感傷に浸るのはこのくらいにして!


「それでは、ここで始めるという認識でいいのですね?」


「えぇ、その通りです」


 という事は、私の血液が必要になるわけだけど……


「いいでしょう。

 それでは……早速、始めるとしましょうか」


 教団……光の使徒の、ミカエル達の宿願。

 400年前の聖魔大戦にて、魔法神ティフィア様によって封印された女神アナスタシアの復活。


「貴方達、光の使徒の宿願を叶えるための儀式を」


 よし! キリッと決まった。

 これで私に対する印象も、かなり回復したは……


「子猫の姿で私に抱かれながら、キリッと真剣な面持ちでっ……」


「ぐふっ……!」


「「はぁ……」」


 恍惚な表情を浮かべるルミエ様。

 胸を押さえて膝から崩れ落ちるエレンお兄様。

 呆れたようにため息をつくフィルとガルスさん。


「……」


 なにこのカオス……


「ふふっ、微笑ましいですね」


「っ〜!!」


 ミ、ミカエルにすら生暖かい目で見られちゃったっ!?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る