第440話 封印の地

 早く! 一刻でも早く、この場から移動して……ルミエ様とエレンお兄様の話を終わらせなければっ!!

 さぁミカエル! どこにでもついて行ってあげるから、早く私達を案内なさいっ!


「ふふっ、その必要はありません」


「よし! それじゃあ……あれ?

 今なんて言いましたか?」


 その必要はないって、言ったように聞こえたんですけど。

 聞き間違いかな?


「その必要はありません、と言いました」


 あっ、聞き間違いじゃなかった。

 でも……それじゃあ、どうしてここに。

 ルミエ様と私が初めて出会った場所であり、真下に教団の総本部があるというここに来たんだろ?


 私達はミカエルに案内されて、目的地……魔の森の中心部にある、封印の地ってところを。

 つまりはこの真下にある教団の総本部を目指してるんだと、予想してたんだけど。


「ふんっ、我らの総本部……この下にある場所は、神聖なる領域。

 貴様ら風情が足を踏み入れていい場所ではない」


 めっちゃ蔑むような目で睨まれたんですけど。


「そうですか……えっと、それではウリエルさん、目的地はどこになるんですか?」


「貴様! 人間の分際で我らが真なる神より与えられし、我が敬称もなく名を口にするとは!!」


 うわぁ……ないわ、これはないわ〜。

 さっきからずっと敵意というか、戦意を隠そうともせずに私達を睨んでたけど、さすがにこれは酷い。


 この人は今の状況を理解してないのかな?

 とりあえず、このウリエルって人は社交というか、交渉事というものを全くもってわかってない。


 どれだけ嫌ってる相手でも、内心で見下したり、蔑んだりしてても……表面上はにこやかに振る舞うべきでしょうに。

 しかも! この状態なんだよ?


 ミカエル達の目的……真なる神こと、400年前の聖魔大戦で封印された女神アナスタシアを開発し復活させる。

 それを達するためには、私の存在が必要不可欠だっていうのに。


「はぁ……」


 もしここで私の機嫌を損ねて、一度はまとまった交渉が決裂しちゃったらどうするつもりなのかな?

 まぁ仮にそうなっても、私達なんて簡単にねじ伏せられる! とか思ってそうだけど。


 確かに? ミカエルをはじめとする4人は高位天使だし。

 ウリエルは最高位である熾天使セラフィム続いて、第二位である智天使ケルビムて言ってたし。

 教団での序列もミカエルに次ぐ第二使徒。


 見た目からして脳筋っぽいし、そんな事を考えてても……まぁ、納得はできるけど。

 それにしても、私達も甘く見られたものだわ。

 これでも一応は人類最強の一角なんだけどなぁ〜。


「それで……ミカエルさん、目的地はどこなのでしょうか?」


「貴様ぁ……」


「ウリエル、少し静かに」


「し、しかしっ!」


「黙れと言っているのがわからないのか?」


「っ!!」


 おぉ〜、さすがは最高位天使たる熾天使セラフィム

 なかなかの威圧感だわ!!


「し、失礼致しました」


「彼が無礼な態度を取ってしまい申し訳ありません。

 どうかここは、私の顔を立ててくださいませんか?」


「別に構いませんよ」


 ふっ! これこそが大人の余裕ってやつよ!!

 ウリエルも少しは、私を見習うことね!


「ありがとうございます。

 それで本題ですが……目的地はここです」


「ここ?」


「えぇ、この場所こそ、まさしく我らが真なる神であるアナスタシア様が封じられた地。

 400年前の聖魔大戦の終盤、まさにこの場所で魔神の手によってアナスタシア様は囚われの身となったのです」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る