第428話 私達は……

「サモンズ・ナイト」


 白と黒の二色で装飾がなされた見事なフルプレートメイルに身を包み。

 一寸乱れる事なく整列する騎士達……


「我ら忠実なる主人の剣、ここに!!」


 その数、総勢2万!


「サモンズ・マジック」


 白と黒のグラデーションが美しいローブを身に纏い、頭にはいかにもなトンガリ帽子。

 身の丈ほどもある杖を構えて立ち並ぶ魔法使い達。


「我ら忠実なる主人の杖、ここに!!」


 総勢1万!


「アルマさんの召喚魔法は、何度見ても壮観だよ」


「本当にね」


 なんたって、一瞬で3万を超える軍勢を作り上げちゃうわけだし。

 サモンズ・ナイトはギリギリBランクには届かないけど、Cランク上位。


 サモンズ・マジックの方なんて、宮廷魔法使いレベルである魔法士。

 堂々のBランクに匹敵する。


 しかも……アルマさんの召喚魔法による軍勢が恐ろしいのは、これが全体のアベレージではなくデフォルト。

 つまりは一体一体、軍勢のすべてがまったく同じ技量を誇っているという事実!!


「上振れはないけど、下振れもない。

 軍勢を崩すための穴となる弱者が存在せず、2万もの騎士が、1万もの魔法使いが。

 一体一体が、同じ事をする事ができる」


 これがどれだけ凄まじい事か、果たしてどれだけの人が理解していることか。

 確かにこの3万に突出した強者は存在しない。

 けどこれが軍という形なら、途轍もない脅威と言える。


 なにせ実力がまったく同じだから、サモンズ・ナイト2万は熟練冒険者2万人を相手にするようなものだし。

 サモンズ・マジック1万は、宮廷魔法使いを1万人。

 そして何より……この軍勢には恐怖も疲れも存在しない!


 どれほどに無謀な任務でも、命令された通りに忠実にやり遂げる。

 Sランク冒険者の席次では、ロイさんに次いでの14位に甘んじてるけど、個ではなく軍での戦いとなるとアルマさんの右に出る者はいない。


「それに……」


 このサモンズ・ナイトとサモンズ・マジックとは別に、突出した戦力もちゃんと存在するわけだし。


「七色の戦乙女」


「はっ! 私共7名、主様の名に従い見参致しました」


 アルマさんの前に跪く、7人の美女達。

 それぞれが卓越した戦闘能力を有し、一人一人が上位七属性の魔法一属性を使いこなす。

 その実力はAランクの中でも上位!


 そしてこの7名はアルマさんの魔力で作り出した、サモンズ・ナイトとサモンズ・マジック。

 サモンズ達とは違い、アルマさんが契約を結んだ者達。

 実際に生きていて、この場に召喚された者達というわけで。


 当然ながら感情もあるし、アルマさんからの命令がなくても自身で考えて動くことができる。

 しかも! アルマさんと契約を結んだことで、アルマさんの魔素エネルギーが続く限り、怪我をしても治り、死ぬ事はない。


 仮に消滅させられても、復活可能だし。

 そんな反則級のチート持ちが、しかもAランク上位の実力を持つ者達が7人!

 普通にずるい!!


「七色竜」


「「「「「「「ァッ──」」」」」」」


 アルマさんの呼びかけに答えるように、咆哮をあげる7体のドラゴン!

 この7体の竜種がアルマさんが有する最高戦力!!


 それぞれが上位七属性に属する竜種で、その実力は特Aランクの災禍級!!

 単騎で大都市を壊滅せしめることができる程の、まさに竜種に相応しい実力を誇る。


 もちろん! この七色竜達も、七色の戦乙女達と同じで自我があるし。

 アルマさんの魔素が続く限り、死ぬ事はない上に、消滅しで復活できる。


「うん、本当に反則だと思うわ」


 ここにさらにバフをかけて、全体の戦力を底上げする事もできるんだから恐ろしい。

 アルマさんはまさに、単騎で国と戦争する事ができる人なのだ!!


「はぁ……」


 本当は私がビシッと、リーダーとしての威厳を見せつけてやろうと思ってたんだけど……アルマさんに見せ場を持っていかれちゃったし。


「それではアルマさん、ここはお任せしますね」


「あぁ、任せなさい」


 魔の森の魔物達は普通に厄災級、それもAランクを超える存在が多いけど……まぁ、アルマさんなら問題ない。


「それじゃあ……ガルスさん! いつまでもふざけてないで、ちょっとは集中してください!!」


「おい! それをこの2人じゃなくて、俺に言うかっ!?」


 ルミエ様とエレンお兄様と遊んでいて、ちょっとボロボロになってるガルスさんが何か言ってるけど気にしない!


「私達は……こっちの相手をしますよっ!」


 予備動作なく、腰の愛刀・白を一閃!

 真っ直ぐに斬撃が王都の上空に飛来し……



 バチィッ!!



 結界に弾かれて霧散する。


「そろそろ出てきたらどうですか?」


 一瞬の沈黙が舞い降り……


「ふむ、まさか見破られるとは。

 さすがは特異点たる愛子……いや、人類最強の一角たる、Sランク冒険者達というべきか」


 不思議とよく通る声が鳴り響いた。

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