第429話 対話

 ピシッ



 王都上空。

 私の斬撃を弾いてみせた結界に無数の亀裂が走り、破片を光の粒子は変えながら崩れ落ちる。


「あれが……」


 崩れ落ちた結界の中から現れたのは4人、なんだけど……


「そうよ」


「ルミエ様」


「あの4人が教団……光の使徒の最高幹部である十使徒の中でも、頂点に君臨する者達。

 第四使徒、第三使徒、第二使徒、そして第一使徒の4人よ」


「……」


 マジですか。

 いやまぁ、話は聞いてたけども! それでも実際に目にすると……


「ふふっ、使徒とはよく言ったものよね」


 この光景が見える場所にいる王都の全ての人達が、唖然と上空から私達を見下ろす4人を見てるんじゃないかな?

 なにせ……


「光の使徒の4人の創設者達の正体は……本物の天使なんだから」


 4人の背中には純白の翼がっ!!


「ふん、忌々しき悪魔の娘が。

 我らを誰だと思っている? 我らの言動こそが、我らの存在こそが真なる神の御意志なのだ」


「貴様ら風情が頭が高いぞ、無礼者」


「真なる神の御意向の前に、平伏すがいい」


 おぉう、いやまぁ……うん。

 事前に話を聞いて知ってたけど、ここまで高圧的というか、偉そうだとは。


「なるほど、貴方達の言いたい事はわかりました。

 しかし……どれだけ威圧しても無駄ですよ」


 確かに凄まじい重圧だし、本来なら王都中の全ての人を跪かせる事も容易いだろう。

 けど! この程度の威圧じゃあ、フィルが展開してる結界。

 白光の聖域は破れない!!


「私達がそれに従うとでも?」


「貴様っ!」


「よい、お前達は下がっていろ」


「「「っ!?」」」


 腰まで伸びた艶やかな金色の髪、全てを見通すかのような冷たい黄金の瞳。

 4人の中で唯一、2対の翼を持つ男の言葉に、憤っていた3人が息を呑んで押し黙る。


 これだけで、あの4人の関係性は明確!

 ただ1人だけ2対の翼を持ってるし、簡単に予想はついたけど……やっぱり、あの人がボスか。


「皆がすまないね。

 宿願が叶う時が近いせいか少し気が立っているんだ、許してほしい」


 ここで謝罪? いったいどういうつもりなんだろ?


「構いませんよ。

 もともと私達は敵同士ですからね」


 ふっ! 我ながら完璧なポーカーフェイスっ!!

 ここでいきなり謝罪されるのは、流石に予想外だったけど……その程度で動揺させられる私ではないのだよ!!


「敵同士……確かに我らは現在、残念ながら敵対関係にある。

 しかし争う意思はない、我らは対話を希望する。

 特異点たる愛子よ、争わずに済むならそれが一番だとは思わないか?」


 対話ね……さて、どうしたものか。

 確かに争わずに済むのなら、それが一番ではあるんだけど……


「ルミエ様」


「ふふっ、私達のリーダーはソフィーよ。

 ソフィーの好きにするといいわ」


「そうだぞ、ソフィー。

 ルミエ様のおっしゃる通りだ!」


「クックック、まぁ嬢ちゃんがリーダーだからな」


 えぇ……ここで私に丸投げって!


「まっ、そういう事だね」


 フィルまで……


「もう! どうなっても知りませんからね!!」


 そもそも私が最初にみんなのリーダー……どういうか船長になった時に、全ての責任はガルスさんにあるって決まったしわけだし!!


「いいでしょう。

 貴方達の提案を受け入れましょう」


「それはよかった」



 パチンっ!



 教団のボスが軽く指を打ち鳴らした瞬間──


「これは……」


 アルマさんの軍勢と衝突していた魔物の大群が、一斉に動きを止めた。

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