第393話 王城へ!

「ほぁ〜」


 すごい!

 なにがすごいって……とにかくすごいっ!!

 ここが神の国! ルミエ様のお母様である、魔法神ティフィア様が治めていらっしゃる国の都市っ!!


「ソフィー、危ないから窓から身を乗り出すのはやめようね」


「むっ」


 フィルったら、なにを言ってるの?

 私はクールでかっこよくて妖艶でもある孤高の悪役令嬢にして、今や大陸中にその名を響かせる天才なのに。


「もし仮に窓から外に放り出されちゃっても、怪我もしないだろうから問題ないよ?」


 なにせ! 私は天才っ!!

 Sランク冒険者の中でも序列3位! 別格であるルミエ様とガルスさんを除けば、頂点に君臨する実力者なのだから!!

 まったく、そんなのわかりきってる事だろうに。


「やれやれ」


 確かに魔導車はそれなりの速度が出てるけど、それでも時速30キロ程度だし。

 窓から身を乗り出しても、私なら危険なんてないに等しいのに。


「えっ、なんで僕が呆れられてるの……?」


 それに! それにだ!!


「フィル、ここは御伽話の楽園!

 魔法神ティフィア様が治めていらっしゃる、伝説の神の国なんだよ!?

 そんな国の景色を見ないなんてありえないっ!!」


 にも関わらず! フィルもだけど……なんでみんな、そんなに落ち着いてシートに座ってるのっ!?

 いや、ルミエ様とガルスわかるよ? だってルミエ様はこの国の出身で、ガルスさんもこの国に来た事があるわけだし。


 でもでも! 他のみんなは違うじゃんっ!!

 初めてこの場所に来たわけじゃんか!

 今まで誰も足を踏み入れた事がない、伝説の地にいるわけなのに……もっとテンションが上がるでしょ普通!


「まぁまぁ、とりあえず落ち着けって」


「そうですよ、深呼吸しましょう」


 ロイさん、イヴさん……他のみんなも、なんか生暖かい目をしてるし。

 おかしい、私みたいな反応が普通な筈なのに。


 というか! 私は特級任務の船長!!

 さらには序列3位なのに……もっとみんな、私のことを尊敬してくれてもいいと思う。


「むぅ、わかりました」


 まぁ、ちょっと……ほんのちょっとだけテンションが上がりすぎちゃってた自覚はあるから、深呼吸はするけども。


「すぅ……はぁ〜」


「ソフィア、落ち着いた?」


「は、はい」


 いやまぁ、落ち着いたは落ち着いたけど……ラピストさん、さすがに頭を撫でられるのは恥ずかしいのですが……!


「ふふっ、楽しんでいただけているようで何よりです」


「うぅ……」


 やばい、今になってテンション爆上がりしてた事実が恥ずかしくなってきた!!

 で、でも! 私のテンションが上がっちゃうのも仕方ないと思う!


 だって……今乗ってる魔導車もだけど、当然のように転移門があったし。

 首都であるここフィーレも、さっきまでいた竜都ドラゴニアも今まだ見たこともないほどの大都市だし。


 そこかしこで当たり前のように使われている、私でも理解しきれない魔法技術や数々!

 こんなの魔導学園都市王国でも見た事がないレベルだし。

 さすがは神の国って感じでとにかくすごい!!


「後ほど、街中をご案内しましょう」


「本当ですかっ!?」


「えぇ、心ゆくまで自由に観光してください」


「っ〜! ありがとうございます!!」


 やった! これでこの国を好きなだけ見て回れるっ!!


「ですがその前に……皆様にはこれから王城で、国王陛下に謁見していただきます」


「わかりました! ……ん?」


 国王?


「女王陛下では、なくてですか?」


 も、もしかして! 魔法神ティフィア様は本当は女神様じゃなくて、男神様だったっ!?

 もしそうなら人類の常識が、根底から覆るほどの大事件なんですけどっ!!


「はい。

 本来なら女王たるお嬢様が皆様を出迎えるのですが……申し訳ありません」

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