第392話 上陸

「じゃあ、お留守番をお願いね」


「かしこまりました。

 私はこの場所から動けませが……お嬢様、どうかお気をつけて」


 マスったら、そんなに心配そうな顔をしなくてもいいのに。

 それにさっきから、ずっと心配してばっかりだし。

 確かにここから先は……この船から一歩外に出てしまえば、未知の領域だから、心配なのもわからなくもないんだけど。


「もう! ルミエ様やみんなもいるから大丈夫だよ!!」


 それに! こう見えて、私もそれなりには強いのだ!!

 なのにマスもだけど、ルーやファナ、お父様達も過保護すぎるんだよなぁ〜。


「それじゃあ、行ってくるね!」


「いってらっしゃいませ」


 優雅に一礼するマスの見送りを受けて……みんなが待っている甲板に転移!!


「「「「「「「「ワァァァァ!!!」」」」」」」」


「ふぁっ!?」


 び、びっくりしたぁ〜!

 なになに!? なんなのこの大歓声は!!


「あはは、ソフィー、驚きすぎだよ」


「むぅ」


 だって仕方ないじゃん!

 全員で船から降りるにあたって、防犯システムを起動させたりとか色々としないとダメな事があって私だけ船内に戻ってたんだもん!!


 それでマスに引き継ぎを終えて、外に出てみればいきなりの大歓声だよ?

 そんなのびっくりするなって方が無理がある!!


「ふふっ、ソフィーったら可愛いわ〜」


「その通りです! 今日もソフィーは世界一可愛い!!」


「ルミエ様、エレンお兄様……」


「まっ、なかなかにいい反応だったな」


「さすがは我らがお嬢」


 ガルスさんにロイさんまで……うぅ〜、みんなもニヤニヤしてるし!


「ふふ、楽しそうなところ申し訳ありませんが、そろそろ参りましょうか」


 グ、グラン様ぁっ!!

 さすがは魔法神ティフィア様の執事様! ナイスタイミングですっ!


「車をご用意しておりますので、どうぞこちらへ」


「へっ?」


 車って……



 パチンっ!



 グラン様が指を打ち鳴らすと同時に、スッと視界が切り替わる。


「っ!!」


 このルミエ様やマリア先生。

 大悪魔たる七柱の悪魔公デーモンロード、七魔公であるノワール様、レヴィア様、ベル様と比べても遜色のない転移魔法もだけど。


 それよりも……こ、これはっ!!

 いやそんなはずは……でも見た感じは確実にアレだし、何度も見た物だから見間違うはずがない。

 でもだとするとなんで! どうしてコレがここに!?


「こちらの魔導車で転移門ポータル、そして首都にある王城へとご案内します」


 そう! グラン様のいう通り、転移した場所!

 私達の船のすぐそばに止められた、黒塗りのリムジンみたいな車こと……魔導車っ!!


 魔導車は四大国が一角である商業と流通の中地にして、商人達の聖地であるアクムス王国。

 魔導車はアクムス王国でしか作られていないはずなのにっ!


「しっかし……お嬢の言ってた事って本当だったんだな」


「えっ?」


 ロイさん、いきなりどうし……


「てっきり、ルミエ様が魔法神の娘ってのは、お嬢がそういう設定の遊びをしているとばかり」


「なっ!?」


 なんて事言うんですか!!

 まったく私を誰と思ってるのやら、私は天才! 才媛! と名高い公爵令嬢なのに。

 みんなももっとロイさんに言ってやっ……


「そうだな」


「まさか事実だったとはね……」


「ねぇ〜、ちょっとビックリだよ!

 ねっフランちゃん!」


「うん本当に……いやいや! 私は本当に信じてたよ!?」


「あはは……」


「ほぇ?」


 み、みんな、それって……


「し、失礼な!!

 みんな、私の事をなんだと思ってるんですかっ〜!!」


 他のみんなも口々にロイさんに同意してるし、フラン先輩もうんって言っちゃってるし!!

 わ、私の信頼度がここまで低いかったなんて……


「まぁまぁ、そのくらいに。

 それよりもどうぞ、魔導車に乗ってお好きなところにお腰掛けください。

 ここにこれ以上留まっていては、国民に揉みくちゃにされてしまいそうですので」


 グラン様……本当に、なんてデキる執事様なんだろう。


「道中、我が国でも自慢の大都市。

 四大都市が一角、ここ竜都ドラゴニアと首都フィーレの景観をお楽しみください」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る