第389話 ようこそ
ガタッ!
「ほ、本当ですかっ!?」
私達の目的地!
御伽話に語られる楽園!
神話上に語られる、魔法神ティフィア様が作り上げた神の国!!
この2年以上にわたって、人外魔境である大海原を航海して、探し続けていた魔法神ティフィア様が治めるとされる国が見つかったって!
緊急事態って、本当にマジの緊急事態じゃんっ!!
「まぁまぁ、お嬢が驚くのもわかるが、とりあえず落ち着けって」
「はっ!」
や、やってしまった。
私とした事が! 淑女にあるまじき声をあげて、さらには椅子を倒しながら立ち上がってしまうとは。
Sランク冒険者序列3位としての!
なんでもできちゃう、クールで美しくもかっこいい孤高の悪役令嬢という私のイメージがっ!!
「ふふっ、とりあえず座りましょうか」
「は、はい、そうですね……すみません」
うぅ〜! 倒れた椅子をなおしてくれたのはありがたいけど、イヴさんの視線が生暖かいっ!!
というかロイさん! なにをニヤニヤとっ! でも言い返せないぃっ〜!!
で、でも! まだ、まだ被害は最小限!!
まだこの会議室には私達以外の人は来てないから、私のイメージをぶち壊しかねない反応を見られたのはイヴさんとロイさんの2人にだけ。
ここで2人に口止めをすれば、この話が外に漏れることはないし。
私のイメージが木っ端微塵に砕け散るという、最悪の事態は回避できる!
「こほん」
イヴさんに従って椅子に腰掛け……厳かに咳払いを一回。
「イヴさん、ロイさん。
2人はこの部屋で、何も……」
序列3位としての威厳を醸し出しつつ!
「魔法神ティフィア様が治める神の国と思しき場所が見つかったと聞いて、私が取り乱したところなんて見ていない。
わかりましたね?」
有無を言わさない態度と声音で断言するっ!!
ふっ、完璧に決まったわ。
これで私の醜態が外に漏れる事はありえないっ!
「どうぞ、ソフィー様。
ソフィー様のお好きな、ココアをご用意しました」
「あら、ありがとう」
目の前に差し出されたマグカップに入った、ココアを一口。
「ふぅ〜」
あぁ、落ち着くわ〜。
焦っていた心が鎮静化されていく、よう……
「……」
「どうかいたしましたでしょうか?」
爽やかな微笑みを浮かべる……ココアを出してくれた、金髪翠眼の美青年。
「い、いつから」
「ソフィー様、お忘れですか?
この船は私の管理下にありますので、基本的にこの船で起こった事は全て把握しております」
「っ!!」
ですよねっ! いやまぁ、わかってたけども!!
だってこの船の管理を目の前の、クソッタレな攻略対象達もビックリな金髪翠眼の美青年ことマスに任せたのは私だし。
「マス、あのね……」
「っと……おっ、なんだ嬢ちゃん、もう来てたのか」
「ソフィーっ!!」
ガ、ガルスさん! エレンお兄様もっ!!
「すみません、遅くなりました」
「遅くなった」
「おっ待たせ〜!」
フィルにラピストさんに、オラシオさん!
「おや、遅れてしまいましたか?」
「ふふっ、遅くなってごめんなさい」
「到着〜!!」
ミルバレッドさん、オネットさん、フラン先輩!!
「おっ、みんなもう揃ってたのか!
遅れて悪いな」
「どつやら、我々が最後のようだな」
「遅くなったのは貴様らのせいだろう?
こんな朝から酒なんて飲みやがって……」
イェーガーさん、アルマさん、シャドウさんも!!
ま、まずい! 続々とみんなが集まってきてしまった……これじゃあマスに口止めをできない!
「ふふっ、心配しなくてもソフィーが可愛いのは周知の事実。
この場にいる全員が知っているわよ?」
「ルミエ様!!」
これでSランク冒険者15人が、全員集合してしまった。
いや、落ち着け私! 焦る事はない。
そもそもマスは私のスキルである、並列存在と並列思考から生まれた人格。
私とマスの間には、ルーと同じよに魂で繋がっている絆がある!
この絆の繋がりを利用すれば、誰にもバレずに念話で話す事も可能なのだ!! こっそりと口止めすれば問題な……
「ふふっ、それで早速だけれど……おめでとう」
ん?
「ルミエ様?」
「私達は今日、この特級依頼の目的地へと到達したわ。
ようこそ、魔法神ティフィアが治める国へ」
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