第383話 真実の力

「っと、いうわけだ。

 悪いが、すぐに終わらせてもらうぜ?」


 おぉ〜、さすがは魔王の一柱ヒトリにして、獣王国を統べる獣王。

 かっこいい!


「すぐに終わらせる? ふっ……ふふふっ! うふっふっふっ!! 」


「むっ」


 レオン陛下のこの重圧を。

 魔王覇気を真正面から受けてるのに……ルイーナのこの余裕。



「確かにレオン、貴方は強い。

 貴方の力を見誤っていたのは認めるわ」


「そりゃどうも」


「けど……実力の全てを。

 本当の実力を見せていなかったのは、貴方達だけだと思ったのかしら?」


「ほぉ〜ん、お前も本当の実力を隠していたと?」


 ま、マジですか……


「当然でしょう?

 私は光の使徒のスパイとして、魔王の一柱ヒトリに名を連ねていたのよ?

 貴方達に本当の実力なんて、見せるわけがないじゃない」


 確かに、言われてみればスパイだったルイーナが。

 教団が仮想敵としていたであろう魔王である、レオン陛下達の前で本来の力を見せてるとは思えない。


 うん、それはわかるよ? わかるんだけど!!

 それってつまり……全力を出す事なく、ルイーナは魔王の一角に名前を連ねていたってことっ!?


「私のユニークスキル・正直者は、使い勝手が悪いのよ。

 嘘を吐けば吐くほどに、ペナルティが科されるというデメリットが存在する」


「ペナルティだと?」


「そう、吐く嘘の大きさ、量、相手によってペナルティの度量は変化するのだけれど……このペナルティによって、私の魔素エネルギー量は最大で1割、全体の10パーセントまで制限される」


 10パーセント……?


「魔王を相手に嘘を吐いていた私の魔素量は、どれだけ制限されていたと思うかしら?」


「そりゃ、当然最大だろうな」


「ふふっ、その通りよ。

 でもデメリットだけじゃなくて、ちゃんと大きなメリットも存在するのよ?

 それが貴方達にこうして、わざわざ手の内を明かしている理由」


 正直者というスキル名で、嘘を吐くとペナルティを負う。

 という事は正直に、本当の事を話すと……


「嘘を吐かなければ、なんらかのメリットがある。

 そうだな……魔素量が増加するってところか?」


「うふっ、その通りよ。

 本当の事を話す度に正直者の権能による恩恵で、私の魔素量は最大で10倍にまで膨れ上がる」


「っ〜!?」


 んん〜っ!? 今なんて!!

 き、聞き間違いかな? 今ルイーナが10倍とか、意味不明な事を口走ったような気がするんですけど……


「そして私の正体を明かし、こうしてユニークスキルの説明をした今……私の魔素量は」



 ッ────!!!



 なんて、重圧。

 レオン陛下すら……


「最大の恩恵を受け、本来の10倍」


 今までに出会ってきた誰よりも、膨大で圧倒的な魔素量っ!!


「へぇ〜、確かにすごい魔素量だが……本来の自身の魔素量の10倍だ。

 ろくにコントロールもできなんじゃねぇのか?」


 た、確かにレオン陛下の言う通り、本来の自身の魔素量の10倍もの魔素をコントロールするのは至難の業だと思う。

 それは、魔王の一角に名を連ね、教団の最高幹部である十使徒が第六使徒であるルイーナと言えども例外じゃないはず。

 でも……


「えぇ、確かにこの魔素エネルギーを完璧にコントロールする事は、私にも不可能。

 けれど……コントロールなんてする必要はないのよ」


 そう。

 これだけ膨大な魔素なら、解き放つだけで大破壊を引き起こす。

 いちいち細かいコントロールなんて必要ない。


「うふふっ!」


 空中に浮かび上がり、嗜虐的な目でレオン陛下を……私達を見下ろしたルイーナが楽しげに、狂ったような狂気に満ちた笑みを浮かべ……


「圧倒的な力を! 破壊の暴威を知りなさいっ!!」


 瞬間──視界が真っ黒に染まる。

 大地を穿つ、膨大な魔素の奔流が解き放たれた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る