第377話 三つ巴

「うふふっ! びっくりしましたかぁ〜?

 ピアちゃんのサプライズを、喜んでもらえたようで何よりです〜!!」


「っ!」


 教団の最高幹部である十使徒の第七使徒であり、5年前のイストワール王国王都動乱事件を引き起こした張本人。

 そして……かつて私が勝てなかった人物、慈愛のピア。


 この人をバカにしたような、人の神経を逆撫でする話し方といい。

 今の私と同じくらいの15歳前後に見える見た目も、5年前からまったく変わらないわね。


「きゃー! ソフィーちゃんに熱く見つめられちゃってますぅ〜!!

 でもでも! 早く助けてあげないと、魔王レオンが死んじゃいますよ〜??」


「……ふぅ〜」


 落ち着け私! ここで変にイラついても、いい事なんて何もない。

 それに……そんな事はわざわざ言われなくても!


「フィル!」


「わかってる!

 癒しの光を……天の慈光」


 暖かな白い光が……フィルが使える最上位の回復魔法が、レオン陛下を包み込む。

 この天の慈光って魔法なら手足の欠損はもちろん、瀕死の重体でも瞬く間に無傷に戻る。


 光属性、神聖属性については、フィルが私よりも優れた魔法使いだって私も認めてるし。

 サポートとか回復においては、ガルスさんとルミエ様という例外2人を除いてSランク冒険者でも右に出る者がいないほど。


 とりあえず、これでレオン陛下は問題ない。

 しかし……毎回思うけど本当になんで、フィルに天使って二つ名がつかないんだろう?

 不思議でならな……


「クッ……」


「なっ!?」


 うそっ! レオン陛下がガクッと膝をついた!?

 フィルが回復魔法を使ってるのにどうしてっ!!


「これは……傷が回復しない?」


「えっ……」


 そんな……確かにレオン陛下は重症だけど、フィルの回復魔法でも回復しないなんて。


「ぷっ! うふふふ〜!!」


「ピア……」


「実は回復魔法で回復しちゃわないように、回復を妨害する霊薬を使っちゃいましたぁ!

 し、か、もぉ〜、完璧に心臓を破壊しましたからねぇ。

 まだ生きてるのは流石ですけどぉ……残念でしたぁ〜! もう何をしても無駄なんですよぉ〜!!」


「っ〜! 黙れっ!!」


「いやぁ〜ん! 怖いですぅ〜!!」


 くそっ! どうにか、どうにかできないのっ!?


「ふふっ、相変わらず良い趣味をしているわね」


「まったく、遊ぶのも程々にしてくださいよ?」


「キャッ! ルイーナちゃんに褒められちゃった!

 それに比べてシュティルくん、女の子を褒めてあげれないなんてモテませんよぉ〜?」


「はぁ……」


「いや、別に褒めてはいないのだけれど」


 早く! 早くどうにか……


「く、そ……っ」



 ドチャッ……



 レオン陛下が前のめりに倒れ込み、地面に真っ赤な血が飛び散る。


「うそ……」


 そんな……だってレオン陛下は魔王の一柱ヒトリで。

 ルーナ様と同格の存在で。

 あんなに、あんなに凄い魔王覇気を放ってたのに、こんなにあっさりと不意打ちで……


「まさか……」


 わかるよ、フィルの気持ち。


「ぷぷっ! やぁ〜っと、死んだみたいですねぇ〜!!」


「お前っ!!」


「ソフィー、落ち着いて」


「でも!」


「落ち着きなさい」


「っ……!」


「レオン、貴方……」


 そ、そうだよね。

 ルミエ様にとって、レオン陛下はお友達だったわけだもん。

 私なんかより、よっぽど激情に駆られてるはずなのに……そのルミエ様が冷静に努めているんだから、私が取り乱すわけにはいかない。


「はぁ……仕方ないわね。

 ソフィー、フィル、あの3人は私達で片付けるわよ」


「はい!」


「了解です」


 レオン陛下……


「片付ける? ピアちゃん達を??

 またまたぁ〜、たった今目の前で、魔王レオンが殺されたのを忘れちゃったんですかぁ?」


「レオンが死んだ時点で、勝負はついたようなものじゃないかしら?」


「まったくですね。

 我々も甘く見られたものですよ」


 待っていてくださいね。


「そうね……あの男は私が始末するわ。

 ソフィーは……」


「ピアの相手をします」


「じゃあ僕がルイーナだね」


「ふふっ、大丈夫だとは思うけれど、気をつけるなよ?

 貴方達の力を見せてやりなさい」


「はいっ!」


「あはは……善処します」


 レオン陛下の仇を打って、必ずカリンさんを助け出して見せるっ!!

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