第375話 獣魔王の力

 ドカァッ!!


 バキィッ!!


 ズォォンッ!!



「これは……」


 ちょっと想像以上だわ。

 まさか……


「オラオラ! どうしたっ!?

 十使徒の実力ってのはこの程度かっ!!」


 レオン陛下の拳が、腹部に突き刺さり……


「がぁっ──!?」



 ドゴォッ!!



 純白のローブが凄まじい速度で、背後に吹き飛ぶ!

 純白のローブが叩きつけられた、壁が崩れて瓦礫と化す!!


「これほど、圧倒的だなんて」


 ちょっと前までは重厚感たっぷりなで、ちょっとしたパーティーならできそうな広間だったのに……僅か数分足らずで、今やボロボロで瓦礫だらけになってるし。


 あれだけ自信満々だったのに! あれだけ煽ってたのに!!

 まさかここまで一方的な展開になるなんて、いったい誰が想像できただろうか?


「クックック! おいおい、こんなもんか?

 ガッカリさせないでくれよ」


 不敵な笑みを浮かべながら、無傷で佇むレオン陛下。


「がはっ、げほっ! ぐぅ……」


 一方、血反吐を吐きながら咳き込む、ボロボロになったローブを身に纏った男。

 教団……光の使徒の最高幹部、十使徒が第八使徒シュティル・ベラン。


 魔王の実力は把握しているからレオン陛下に勝ち目はないって豪語してた、さっきまでの余裕はどこはやら。

 どうしてあんなに自信満々だったのか、不思議なほどにレオン陛下の一方的な展開なわけだけど。


「これが……獣魔王の力!」


 私の心配を返してほしい。

 なにがレオン陛下に勝ち目はないだ! ちょっと不安になってた私がバカみたいじゃんかっ!!


「クソッ! どういう事ですか?

 なぜ貴方がこれほどまでの力を……」


「フッ、クハッハッハッ! まさかとは思うが……お前らのスパイが本当に、俺達の実力を見極められたとでも思っていたのか?」


「っ……」


「おいおい、マジかよ。

 お前らは魔王という存在が、どんな役割を担っているのかしらねぇのか?」


「役割……?」


 それは私も気になる!

 魔王という存在が担っている役割っていったい……


「まさかそんな事もしらねぇで、俺達の事をわかったつもりになってたのか?

 魔王という存在が担っている役割、それは抑止力だ」


「抑止力……」


「おっ、お嬢ちゃんも初耳か?」


「はい、お恥ずかしながら……」


「まぁ、お嬢ちゃんは人間で、まだ15歳だからな。

 ならさっきの続きだ、魔王というのは本来、人間が大きな戦争を……世界規模での大戦争をしないための抑止力として、生み出された仕組みなんだよ」


 それって、各国の上層部とかでよく言われている……


「ときに愚かな人間を排除し、ときに強大な抑止力として人間同士の大きな衝突を阻止する。

 それが俺達、魔王が担っている役割だ」


「ウフフ、嘘は良くないわよ? レオン」


「やっとご登場か……」


「私が魔王になって100年程が経つけれど、魔王にそんな役割があるなんて話は聞いたことがないわ」


「だろうな、テメェは元々信頼されてねぇって事さ。

 だが、魔王が抑止力という役割を持っているのは紛れもない事実だ」


「フフッ、まぁいいわ。

 そういう事にしておいてあげましょう」


「まっ、信じるも信じねぇもお前らの勝手だが。

 そんな抑止力である俺達が、普段から本気を見せていると思うか?」


「は?」


「しかも信頼のねぇお前の前で、本当の実力を見せるわけがねぇだろ」


「なんですって……」


「さて……ルイーナ、テメェらはこの俺に喧嘩を売ったわけだが……」



 ────ゴッ!!



「「ッ〜!!」」


 レオン陛下から放たられる魔素エネルギーが、存在感が……魔王覇気が一気に膨れ上がって、ルイーナとシュティルが息を呑む。


「俺の娘は無事なんだろうな?」

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