第373話 随分な歓迎じゃねぇか

「まずそうだな……一概に魔王と言っても、俺達の間には実力によって序列がある」


「序列、ですか?」


 それはつまり、私達Sランク冒険者の仲間内で決めてる非公式ランキングみたいにって事かな?


「魔王間に序列があるなんて、初めて聞きました……」


「だろうな。

 魔王間の序列については、公にはされていないからな。

 知ってるのは個人的に付き合いがある連中くらいで、Sランク冒険者とはいえ、お嬢ちゃんがしらねぇのも当然だ」


「なるほど……しかし、どうして公表してないんですか?」


「魔王に名を連ねる者は、皆等しく単騎で人類とやり合えるだけの力を持っているし。

 普通の一般人からしたら、俺達の力に大きな違いなんてねぇだろ?」


「それは……まぁ、確かに」


 一般人からしてみれば、強大な力を持っているっていう点で魔王なんて誰でも一緒だもんね。

 わざわざ魔王間の序列を公表する必要もないか。


「でだ、この序列は数年に一度、魔王が集う会議で変動するんだが……その前に、お嬢ちゃんは俺達、八魔王のうち何人知ってる?」


「一応、全員の異名は知っています。

 けど、名前まで知っているのは、レオン陛下を含めて四柱です」


 八魔王と呼ばれる八柱の魔王達。


「獣魔王レオン陛下、鮮血姫ルーナ様、不死の呪王ナルダバート、灰燼の魔女ルイーナ。

 そして、異名だけ知っているのは暗黒竜王、妖精女帝、大地の支配者……ん? あ、あれ??」


「知っているはずなのに最後の一柱ヒトリの異名が、何故か出てこないか?」


「っ! は、はい……」


「だろうな。

 お嬢ちゃんがのは、その魔王本人がそうなるように仕向けているからだ」


「仕向けて?」


 それはいったいどういう……


「まっ、詳しくは後で説明してやるが……お嬢ちゃんが思い出せない、最後の一柱ヒトリ魔神デヴィルロード


「魔神……」


「現在の序列一位にして、かつて初めて魔王に至り、魔王を名乗った者。

 そして約400年前に六魔王……現在は八魔王だが、魔王という一種のコミニティーを創設した者でもある」


「……」


 なにそれ……ちょっと凄すぎません?


「まっ、400年前から常にずっと序列一位にいる、名実ともに俺達の頂点に君臨してるやつだが。

 アイツはその気になれば世界すら創り変える、お嬢ちゃんの認識を阻害してるようにな」


「っ!!」


「俺達の中でも圧倒的、1人だけ別次元の存在だな」


「ほぇ〜」


 レオン陛下がそこまでいうなんて……


「まぁ、魔神は例外として……現在の序列2位が俺、3位がルーナ、4位がセイヴァエル」


「セイヴァエル?」


「あぁ、暗黒竜王の事だ。

 5位のソルエールが大地の支配者で、6位のカトレアが妖精女帝の名前だ」


 おぉ〜、魔王の名前をサラッと聞いちゃった。


「そんで、2位と3位は大抵が俺とルーナ。

 4位から6位の3人は、ほぼご互角って感じだが……ぶっちゃけ、俺達の間にそこまで大きな力の差はないな」


「では、今回の犯人であるルイーナとナルダバートは……」


「その2人は新しい魔王。

 魔王として俺達の力には大きく劣る」


「マジですか……」


「マジだ。

 まぁそれでも、ヤツらも魔王には違いねぇんだが……来たぞ」



 瞬間──



 音もなく超高速で無数の短剣が飛来し……


「おいおい、随分な感慨じゃねぇか」


 その全てをレオン陛下が叩き落とす。


「クフッ」


 どこからともなく、笑い声が鳴り響き……


「よくぞ……いや、流石と言うべきか、獣魔王レオン」


 純白のローブに身を包み、口元に笑みを浮かべながらフードを深く被った人物が、いつのまにか私達の視線の先に。

 開けた通路の奥に立っていた。

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