第366話 決闘
「お父様!」
「あぁ、わかってる」
面白そうにちょっと悪い顔で、ニヤニヤしているレオン陛下が軽く頷き……
「じゃあ双方、準備はいいな?」
「当然!!」
「はい」
「そんじゃあまぁ……存分にやり合えよ」
パチンッ!!
おぉ〜、流石は魔王の一角と言うべきか。
レオン陛下が試合開始のための合図として指を打ち鳴らした瞬間に、魔力の波動が広がった。
──!!
開始の合図と同時に地面が爆ぜる。
「はぁっ!!」
まさに一瞬というのが相応しいほどの速度!
が地面を蹴って踏み込んできた、ケモ耳ツンデレ美少女カリンさんが拳を振り上げ……
「えっ……?」
私によけられたという事実に唖然と目を見開く。
「びっくりしてるようですけど、どうかしましたか?」
確かに速度はすごい、常人なら認識すらできないうちにやられちゃっただろうし。
魔王の一角である獣魔王レオン陛下の娘なだけはある。
が……速いだけで攻撃自体は直線的だし。
ぶっちゃけ、そのスピードも今まで私が戦って来た魔王や、特Sランクの神災級に数えられる魔物達には及ばない。
まぁ、それでも常人はもちろん、並の存在なら反応すらできない程には速いんだけど。
私にかかればこの通り!!
「ほっ」
拳が空を切って、身体が伸び切った状態のカレンさんの足を引っ掛けてっと!
「きゃっ!」
カリンさんくらいのスピードなら、この私には通用しないのだよ!!
「ふふん!」
「ッ〜!!」
足を引っ掛けられて、きゃっ! って悲鳴をあげはしたけど、しっかりと受け身をとって倒れはしなかったか。
この品やから身体に、戦闘センスは流石の一言! でも……
「この程度ですか?」
この程度なら、残念ながら私の敵にはなり得ないんだよね〜。
「う、嘘でしょ……私の攻撃を避けられるなんて……」
「まぁこれでも一応、人類最強の一角なので!」
そう簡単に負けるわけにはいかないのである!
まぁもっとも、今のカリンさんになら十中八九負ける事はないと思うけど……
相手は魔王の娘!
この決闘の前にレオン陛下から、末娘って事で自分も他の親兄弟もカリンの事を甘やかしてしまってて、ここ最近は調子に乗ってるから鼻っ柱を追ってやってくれって頼まれてるし。
油断は禁物!
油断せずに慎重に。
しっかりとカリンさんの実力を見極めて……その上で可能ならば圧倒する!!
「カリンさんには、私の実力を見せてあげましょう」
「ぐ、偶然避けられたからって調子に乗らないことね!!
貴女なんて、私が本気になれば一瞬で負けるんだから!」
「それは楽しみです。
でも……こう見えて実は私、ここ最近誰にも負けた事がないんですよ?」
一切の予備動作なしに、転移魔法を発動!
カリンさんの背後をとって……
「ッ!!」
「はい、これで……」
咄嗟に振り返ったカリンさんの首筋に、剣を据える。
「一回死亡です」
「このっ!」
闇雲に放たれた回し蹴りをバックステップでかわしつつ、土属性魔法でカリンさんの足元を固めて、動きが止まったところを風属性魔法で吹っ飛ばす!!
「くっ……」
吹っ飛ばされながらも、空中で体制を整えて着地したカリンさんへと間を空けずに蹴りを!
「うっ!」
「流石、ですね。
まさか今のを防ぐだけじゃなくて、反撃されるとは思いませんでしたよ」
私の蹴りに合わせたカウンター。
むろん私も防御したけど、あのタイミングちょっと腕が痺れてる程の反撃をされるなんて。
「ふふっ、貴女もね。
でも勝つのはこの私よ!!」
「言ってくれますね……でも勝つのは私です!!」
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