第364話 誰なのよ!!
「ほわぁ〜!」
すごい! すごいっ!
綺麗に整備されて美しく、四大国の首都と比べても遜色ない街並み!
人々の活気に満ちた喧騒!
そして何より……道行く人達の頭上に、背後にっ! ピコピコ、ユラユラと揺れ動くケモ耳と尻尾っ!!
か、かわゆいっ! 勝手に手がワキワキしてしまう! エデンはここにあったのか!?
「お嬢ちゃんもかよ……」
「へっ?」
それってどういう……
「はっ!!」
も、もしかして、獣王国の王城から見える麗しきモフモフ達……もとい、美しい街並みに見惚れて、レオン陛下のお話を聞き逃してしまったんじゃ……!
「いや、なんでもねぇから気にしないでくれ」
「で、ですが」
うぅ〜私とした事が!! 麗しきモフモフ達のエデンに、まさかこんな伏兵がっ!!
「いや本当に。
それよりも、着いたぞ」
外壁の外で邂逅してから、王城まで転移して、更には自ら私達を先導して王城内を案内してくださっていたレオン陛下が立ち止まる。
あぁ〜、なんかちょっと緊張してきた!
そりゃあ、私は公爵令嬢だし?
王太子の婚約者で、なおかつSランク冒険者なわけだから、王族との謁見なんて慣れてるけど。
それが魔王との謁見となると話は別っ!
魔王との謁見でなにかやらかしちゃったら……最悪の場合、魔王との一角との戦争なんて事にもなりかねない。
粗相のないように注意しないとっ!!
「本来なら玉座で謁見するべきなんだろうが、ルミエは今更だしな。
そんな面倒な事はなしでいいだろう」
えっ?
「お前らは特別だ」
レオン陛下自ら扉を押し開いた先は……
「さて、好きな所に座ってくれ」
謁見の間どころか、会議室でもない。
クッションが大量に置かれた、なんというか……魔王ってイメージに似つかわしくない可愛らしい光景なんですけど。
というか……
「むふぁ〜」
「えっ? なんで!」
「ん、よく来た」
「どうしてレフィーちゃんがここにっ!?」
我が物顔で当然のように大きなクッションに体を埋めてるレフィーちゃんは、それはもう超絶可愛いけど!
なんで世界三大学園で、学園の妖精と呼ばれているレフィーちゃんがここにっ!?
「ふっ、ここも私の領域」
「はぁ……」
ふふん! って胸を張ってドヤってるレフィーちゃんと、頭痛を堪えるようにこめかみに手を当てて首を振りながらため息をつくレオン陛下。
なにこれ? どういう状況なの??
「まぁ、お嬢の事は置いておいてだ。
とりあえず座ってくれ」
えっと……
「わかりました」
えっ! フィルっ!
「まったく……もう少しくらい魔王としての威厳は保てないのかしら?」
ルミエ様っ!?
「ほら、お嬢ちゃんも」
「わ、わかりました!」
と、とりあえずフィルとルミエ様の間のクッションに……
「ほわっ!?」
何かが膝の上に……
「って! レフィーちゃんっ!?」
「むふふ! ここは私の特等席」
可愛い……じゃなくて! ど、どうすれば……
「はぁ……まったく。
お嬢ちゃんも、うちのお嬢が悪いな」
「い、いえ……」
なぜかレオン陛下に謝られてしまった。
というかレフィーちゃんの事をお嬢って、レオン陛下とレフィーちゃんってどういう関係なんだろ?
「それじゃあ早速だが……俺はちまちまと回りくどいのは嫌いでな。
本題に入ろうぜ、観光するためにこの国まで来たわけじゃねぇんだろ?」
「っ!」
ニヤリと笑みを浮かべてるのに、自然と身が引き締まる……これが獣王国ビスバロニスを統べる
獣魔王レオン陛下……
「むっ、私のソフィーを、威圧するな」
「レ、レフィーちゃん!!」
レオン陛下になにを……!
「あのな……お嬢、これは真剣な話なんだ。
俺にも獣王としての威厳ってのがあ……」
バンッ!!
レオン陛下の言葉を遮って、勢いよく扉が押し開かれ……
「レフィー様っ!」
あっ、なんかマズイ気がする。
満面の笑みで入って来た人との、ガッツリ目があっちゃった。
あぁ、ほらみるみる怒ったような顔に。
「貴女、誰なのよ!!」
おぉう、謎の美少女にキッ! っと睨みつけられてしまった……
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