第21章 魔の国編

第362話 魔の国へっ!

「では、行って来ますね」


「っ〜……ソフィーっ!!」


 イストワール王国が王都ノリアナ。

 その王都の中でも一等地に存在し、広大な敷地面積を誇るルスキューレ公爵家のお屋敷。


 つまり我が家なわけだけど……そのお屋敷の前で、今にも泣き出しちゃいそうなお父様に抱きしめられる。

 うん、まぁ……いつもの事だし、もう慣れてるから別にいいんだけどね。


「もう、お父様ったら」


 なんと言いますか、いくら慣れているといってもだよ?

 私ももう15歳なわけですし、一目も憚らずにこうされてると流石にちょっと恥ずかしいんだよね。


 そりゃあ万が一にも他の貴族の人に見られないように、認識阻害の結界を展開してるし。

 人目も憚らずって言っても、この光景を見てるのは家族と公爵家に仕えてくれている使用人のみんなくらいだけども。


 それでも! 恥ずかしいものは恥ずかしいのだ!!

 でもやめて欲しいってハッキリ言っちゃうと、めっちゃ悲しいそうな顔をされて、罪悪感が凄いから言い出せない……!


「ソフィー……本当に行ってしまうのかい?」


「うっ……」


 そ、そんな悲しそうな顔で卑怯ですよ!!


「ソフィー、やっぱり考え直そう」


「そうだぞ。

 別にソフィーがこんな事をする必要はないんだからな?」


「アルトお兄様、エレンお兄様……」


 お兄様達もそんな悲しそうな顔を……っていうか、なんでお兄様達がここにっ!?

 こうなる事を予想してたから、お兄様達がいないはずの今日に出発しようと思ってたのに!


 アルトお兄様は第15魔塔の魔塔主である十四賢者の1人として、魔導学園都市王国の首都である第一都市にあるマリア先生の第1魔塔で行われている会議に。


 エレンお兄様は現在遂行中の特級任務。

 ルミエ様のお母様である魔法神・女神ティフィア様が治めてる国を探す任務の船番で、今日は船にいるはずのに!!

 なのになんで当然のような顔で、普通にここにいるの!?


「そうだよソフィー。

 エレンの言う通り、こんな危険な事をソフィーがする必要なんてどこにもないんだ。

 だから、とりあえず今日はお父様達と一緒に、屋敷でのんびりしよう」


「うんうん! それがいいよ!!」


「そうだな! 父上の仰る通りだ!!」


 お父様が私の頭を優しく撫でながら満面の笑みを浮かべて、お兄様達もそれに追随し……



 スパァ〜ン!!



 おぉ〜3人の後頭部に、見事な一撃が炸裂した。


「あなた、いい加減にしなさい。

 ソフィーちゃんが困っているでしょう?」


「リ、リア……しかしっ!」


「しかし、じゃありません」


「アルト様もですよ」


「エレンも、ソフィーちゃんを困らせたらダメでしょう?」


「「うっ……」」


 流石はお母様にフィアナお姉様にディアお姉様だわ!!


「ソフィーちゃんが心配なのはわかるけれど、もっとソフィーちゃんを信じてあげないと。

 そんな事だと、いつか嫌われるわよ?」


「「「っ!?」」」


 お父様達のメンタルに80のダメージっ!!


「わ、わかったよ……ソフィー、本当に! 本当にっ! 気をつけるんだよ?」


「わかってます!」


 そりゃあ確かに私は強くなったし、自分が人類最強の一角と謳われるに相応しいだけの実力者だと自負してる。

 けど! これから赴くは魔王が治める領土っ! 油断も慢心もないし、無理は決して犯さない!!


「フィルくん、ソフィーをよろしく頼むよ」


「お任せください。

 ソフィーは僕が守りますよ」


「むっ」


 私の方がフィルよりも強いんだからね!!

 ここは一度ビシッと言って……


「ふふふっ」


「ほわっ!? もう、ルミエ様……」


 いきなり抱き寄せられたから、ビックリして変な声が出ちゃったじゃないですか!


「ソフィーの可愛らしい顔を見てるのもいいけど……そろそろ行きましょうか」


「むぅ……わかりました。

 それでは! 今度こそ行って来ます!!」


 いざ! 魔王の治める国へっ!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る