第360話 ボス戦、決着
「ソフィー、これって乙女ゲーム通りの展開なの?」
「ううん、違うわ。
前に乙女ゲームと現実は大きな流れは一緒だけど、細かい所で差異がたくさんあるって言ったでしょ?」
「言ってたね」
「乙女ゲームにはユニークスキルなんて設定はないの、これも乙女ゲームとは違う差異の1つ」
「うんうん、なるほど……えっ?」
あのゲームにはHPとかMPその他ステータス、多種多様なスキルは存在したけどユニークスキルを始め、固有スキルとか普通のスキル以外の設定は存在しない。
だから私も5歳の時に初めて自分のステータスを確認した時に、ユニークスキルの事を知らなかったわけだし。
まぁ乙女ゲームではユニークスキルとかの代わりに、この世界には存在しないレベルシステムは存在したんだけど。
「ユニークスキルが存在しない?」
「そう! 乙女ゲームでは事前にボスに勝てる強さまでレベリングしてから、ボスに戦いを挑むの。
それに……この戦いは乙女ゲームでは戦闘要素のチュートリアル扱いだから、こんなふうに窮地に陥る事はあまりないんだけど」
まぁ、それでもボス戦はその時点ではレベリング可能レベルギリギリまで上げとかないと、普通に負けちゃうんだけども。
これが鬼畜と呼ばれる所以! 何人のゲーマーが、このチュートリアルであるダンジョンで涙を呑んだ事やら。
「乙女ゲームにはユニークスキルが存在しないなんて初耳なんだけど」
「あれ、そうだっけ?」
そう言われてみれば、ユニークスキルがなくてレベルシステムとゲーム的ステータスがあるとかは話してなかった気がしないでもない。
「まぁ、とにかく! もうそろそろ決着かな?」
「はぁ……だろうね。
ユニークスキルは総じて強力なものが多い、それを5人が同時に獲得したのなら形成は一気に逆転しても不思議じゃない」
「うんうん!」
全てのスキルの中で最上位に位置するユニークスキルを獲得できるのは、ごく一部のほんの一握り者達のみ。
その権能はどれも強力の一言!
そんなユニークスキルを5人が同時に獲得して、急にパワーアップしちゃったらね。
流石は主人公達というべきなのか、こんなのまさに理不尽の一言じゃん!
いかに
フィルのいう通り一気に形勢が逆転して、勝負がついてもおかしくないんだけど……
「ッ! なん……なんなのですか!
貴方達はなんなのですかっ!!」
「「「「「ッ!!」」」」」
覚醒してユニークスキルを獲得した5人に周囲を包囲され、全身ボロボロながらも両足で立つ男が。
影の騎士のリーダーが鋭い視線で、セドリック達を見据えて吠える。
はっきり言って、もう勝負はついているはずなのに。
押しているはずのセドリック達が、思わず後ずさる程の眼光! 満身創痍とは思えない程のこの迫力!!
「流石はA+っていったところね」
「まさかここまで粘るとはね」
セドリック達が覚醒してから既に一時間以上。
覚醒してユニークスキルを獲得した事で、Aランククラスの実力を手に入れた乙女ゲームの主人公達5人を相手に、5対1の状況でここまでもったのは賞賛に値する。
「けど、流石にもう限界。
勝負はついた……この戦いはセドリック達の勝ちだ」
フィルがそう断言するが早いか……
「くっ、こんな、ところで……」
膝がガクンと折れて、両膝を地面についた影の騎士のリーダーが前のめりに倒れ込む。
「勝った……のか?」
「やっ……やったぁ〜!!」
地面に倒れ伏す影の騎士のリーダーを見て、セドリックが唖然と呟きエマが歓喜の声を上げる。
「ふぅ……なんとかなったようですね」
「流石にもう終わりかと思ったぜ……サイラス、頼んだぞ」
「あぁ、わかっている。
とはいえ……流石にもう魔力が尽きそうだ」
オズワルド、ガイル、サイラスも安堵の息を吐きながら、サイラスが気絶している影の騎士のリーダーを拘束する。
「さて……」
もうこの拠点には他の幹部達はいないから、あとは残っているのは有象無象のモブだけ。
乙女ゲームの展開通り問題なく影の騎士のこの拠点を潰して、保護した子供達を連れ帰れるかな。
「フィル」
「わかってるよ」
「流石ね。
それじゃあ! 私達も行くとしますか!!」
このダンジョンの奥から近づいてくる……影の騎士のリーダーを凌駕する強大な
せっかく乙女ゲーム通りの展開なのだ。
「ふふっ」
誰かは知らないけど……私がいる限り、邪魔はさせない!!
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