第350話 その必要はないわよ?

「ふ、ふ〜ん。

 なかなかやるじゃんか」


 流石は主人公でありヒロインでもある聖女エマと、ヒーローでるセドリックを筆頭とする4人。

 まさかこの短時間で第5階層まで到達するとは。


 まっ! 第1から第4までは、所詮はFランクの魔物しか出現しないわけだし?

 こんな超ハイペースで攻略できるのも当然と言えば当然なんだけども!!


 私なら一人でももっと早く第5階層まで到達できたし!

 確かに思ってたよりはかなり速いハイペースだけど、まだまだ想定の域からは出ていない。

 それにっ! 問題はここからなのだよ!!


 このダンジョン・魔天楼は5階層ごとに難易度が一段上がる。

 いわば! ここまではただのウォーミングアップ!

 ここからが本当の始まりであり、調子に乗って油断していると痛い目を見る羽目になる。


「ふむ」


 オルガマギア魔法学園で生徒でありながら特別名誉教授でもある私から見て、セドリック達の現在の実力は冒険者で言うところのギリギリCランクに届くかどうかといった程度。


 まぁ、まだ15歳なのにすでに一人前を超えて、熟練とされるCランク冒険者相当の実力があるのは称賛に値する事だし。

 第5階層までを余裕で踏破できるのも納得できる。


 が、所詮はその程度。

 一流と呼ばれるBランク冒険者クラスにはとても及ばないし、それに加えてギリギリCランク相当と言っても残念ながら彼らには実戦経験がほとんどない。


 このダンジョンでは5階層からは敵の数が増え、10階層からはEランクが、15回層からはDランク。

 それ以降も5階層ごとに難易度が上がって、20階層からは10階層ごとにボス部屋が登場。


 25階層からはさまざまなトラップが加わり、30回層のボス戦にはCランクの敵が出現。

 35回層以降はCランクの敵のみが出現し、40階層のボス戦ではついにBランクの魔物が出現する。


 そして50回層目からは悪魔族デーモンが……Aランクに相当する下位悪魔レッサーデーモンが出てくるわけだけど。

 それはひとまず置いておくとして……


「やっぱり、ちょっと厳しいかな?」


 ギリギリCランク冒険者相当の実力があっても、戦闘経験がほとんどない温室育ちのセドリック達には単体でしか敵が出てこなかったここまでとは違って、集団で敵が出現するここからは手こずる事になると見た!!


「ウフフ、この子はいつもこうなの?」


「はい。

 シリアスな顔なのに、実際にはノワール様のお膝の上に座っているギャップがもう!」


「真剣な顔でちゃんと考察するソフィーちゃん可愛い〜」


「まったく貴女達は……でも、ソフィーが可愛いという事には同意するわ」


「……」


 と、とにかく!

 セドリック達にはちゃんとイベントをこなして、最終的には魔王を撃破……ではなく、私との婚約を破棄してもらう必要がある!!


 私はエマをイジメたりしてないし、所々ですでに乙女ゲームとは違うところはあるけど……ガイルとサイラス以外とはなんだかんだで好感度も上がってるみたいだし。

 あの4人には頑張って、今回の夏休みイベントを達成してもらわないとね!


「それじゃあ私達もそろそろ行ってきますね!


 まぁ、流石に危なくなれば陰ながら私達がサポートしたり、助けてあげるつもりだから頑張ってくれたまえ!!

 とりあえずの目標は……今回の夏休みイベントのボスである犯罪組織、影の騎士シャドウの拠点がある12回層!


「あら、その必要はないわよ?」

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