第347話 一つだけ言わせてほしい

 レフィア神聖王国の王城の城門での一幕から1週間。

 セドリック達は今度はちゃんと大使館を通じて急遽アポを取り付けて、レフィア神聖王国の国王陛下へと……つまりはフィルのお父様への挨拶をついに終えた。


 そんなわけで! 国王陛下へと挨拶できた今日までの1週間で、レフィア神聖王国の首都であるここ王都レ・フィーアでの観光を済ませていた彼らは、早速レベリングのためにダンジョンへと出向く!!


 まぁレベリングといっても、この世界にはレベルなんてシステムはないんだけども。

 とにかく! セドリック達は、本来の目的地であったレフィア神聖王国の王都近郊にある迷宮ダンジョンに向かった。



『はぁ!』



 エマが放った神聖魔法によって、向かってきていた魔物が消滅する。



『流石だね。

 でもダンジョンでは何があるかわからない、危険だからあまり私から離れたらダメだよ?』


『もう! セドは過保護すぎるよ!!』


『まぁまぁ、そう言わずに。

 殿下だけじゃなく、私達も心配しているんですよ?』


『もう! オズくんまで……私は聖女なんだよ? このくらい大丈夫だよ!!』



 などなど、ダンジョンの低級の魔物しか出てこない浅い階層で、Fランクの魔物を倒しながらキャッキャウフフと順調にダンジョンを攻略するセドリック達。


 まぁ順調と言っても、まだ第一階層。

 本当に序盤も序盤で、最弱とされるFランクの魔物しか出てこないから当然なんだけども。

 それでも油断しすぎだとは思うけど。


 レフィア神聖王国にはいくつかダンジョンが存在する。

 けどネフェリル帝国の奈落、アクムス王国の世界樹、魔導学園都市王国の大罪ように、他の四大国には存在する七大迷宮に数えられているダンジョンは存在しない。


 しかしながら、今いるこのダンジョンは未だ誰も踏破した事がない未踏破ダンジョン!!

 確かに七大迷宮には一歩劣るとされているものの……このダンジョン、天楼は七大迷宮と同じSランクと冒険者ギルドによって定められている危険地帯なのである!!


「ウフフ!」


 推定100階層からなる大規模ダンジョンであり、中間となる50階層以降はこのダンジョンが天楼と名付けられた所以。

 悪魔族デーモンが姿を見せる。


 数多くの悪魔達が巣食う魔窟、悪魔達の楽園!

 それこそSランクダンジョンに指定された、世界でも屈指の高難易度未踏破ダンジョン・魔天楼!!


 とはいえ途中まではFランクの魔物しか出てこない事から、入場の規制はかけられていない。

 だからセドリック達もダンジョンに入れてるんだけど。


 とにかく! このダンジョンはSランク冒険者であり、人類最強の一角である私達でも危険な場所!!

だから気を引き締めて! 覚悟を決めてダンジョンに足を踏み入れた……んだけど……


「2人から話には聞いていたけれど……あぁ〜! 本当に可愛いわ〜!!」


 私を膝の上に乗せて、恍惚とした表情を浮かべる黒髪黒目の妖艶な美女。


「ソフィーちゃん、こっちも食べてください」


 美味しそうなケーキを刺したフォークを、私の口元に持ってきてあ〜んをする透き通るような青い瞳と髪の美少女。


「むふふ〜! ソフィーちゃん、もっと撫でて〜」


 のんびりと間伸びした声で甘えるように、私の手に頭を押し付けてくるゆるふわショートボブの髪に、ブラウンの瞳をしたまだ若干幼さの残る美少女。


「あはは……」


「まったく……」


 そして、そんな私達を見て苦笑いを浮かべて紅茶を飲むフィルと、呆れたようにため息をつくルミエ様。


「うん」


 とりあえず、一つだけ言わせてほしい……何この状況っ!?

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