第345話 イベント舞台は……!

「はぁ〜、疲れたぁ……」


 Sランク冒険者が勢揃いしている会議室から逃げ損ね、あのあと根掘り葉掘りと夏休みイベント以外の事も喋らされた。

 もうあんなの質問じゃなくて尋問じゃん!!


 まったく私だったからよかったものの、Sランク冒険者達によって尋問されるとか……

 これが普通のご令嬢ならパニックになって失神ものだよ?


 基本的に高位の冒険者ほど、貴族とかと関わる事も多いから見た目は冒険者らしく粗暴でも礼儀正しい人が多い。

 けど! Sランク冒険者に限って、話は変わる。


 なんたって冒険者ギルド統括グランドマスターたるガルドさんが個性の塊と称する程だし。

 総じて個人で国家並みの力を有する彼らは、礼儀作法なんかには囚われない。


 つまり、何が言いたいのかというと!!

 Sランク冒険者のみんなには常識ってものがあまりない!

 それこそ私みたいな公爵令嬢を、会議室に監禁して! 寄ってたかって尋問する程度にはっ!!


「やれやれ」


 今度一度Sランク冒険者のみんなには、貴族との接し方とか、女の子への接し方とかを講義してあげた方がいいかも。

 私一人じゃキツイけど、エレンお兄様とフィルもいるし……うん! 我ながらいいアイデアではないだろうか!!


「やれやれって言いたいのはこっちだよ……」


 フィルがなんか言ってるけど……


「ふむ」


 疲れてるのかな?

 まっ! フィルも私と一緒で昨日から休みなしだもんね。

 いくらSランク冒険者といえど、疲れちゃうのは仕方がない。


「お疲れ様」


 苦笑いでため息をついてるフィルの肩を、ぽんぽんと軽く叩いて労ってあげて……


「私は1人でも大丈夫だから、今日はもう帰った方がいいよ」


 誰もが見惚れるような優しい笑みを浮かべて、言い聞かせるように告げる!

 みんなの尋問によって根掘り葉掘り喋らされ、乙女ゲームのイベント時にはSランク冒険者の誰かと行動する事が決められた。


 私の意見は聞く事なく!

 そんなわけで、今はフィルと一緒にいるわけだけど……私としては1人の方が気楽で、自由に行動できる。

 だからぶっちゃけ帰ってほしいくらいなんだよね〜。

 ふふふっ、うまく帰るように誘導してやるわ!


「帰るって……」


 いやまぁ、うん。

 フィルの言いたい事はわかるよ? けど! 私が言っているのはそういう事ではないのだよ!!


「オルガマギア魔法学園の生徒なんだし、更にはフィルは副生徒会長なんだよ?

 たまには学園にも顔を出さないと」


「それをいうと、ソフィーは生徒会長でしょ?」


 うっ、痛いところをついてくるわね。


「わ、私は担ぎ上げられただけのお飾りだからいいの!

 それよりも今日は学園に帰った方がいいと思うよ!?」


「うん、まぁ……とりあえずこれだけは言っておくけど、帰るつもりはないよ?

 目を離すとソフィーは何をしでかすかわからないからね」


「チッ」


 失敗したか。

 さすがは我が相棒たるフィル、手強いわね……はぁ、こうなったら仕方がない。

 時間もないしSランク冒険者マナー講座の事もまた今度ちゃんと考えるとして、今はそんな事より〜!!


「来たっ!

 フィル、フィル! ほら、来たよっ!!」


 私達がいる城壁から見通せる大通りの先。

 十騎以上の騎士達に守られながら、悠々と街道を走るはイストワール王国の、王家の紋章が描かれた1つの馬車。


「乙女ゲーム通り、やっぱりここに来たわね」


「あぁ、来ちゃったか〜。

 この国の第一王子として言わせて貰えば、この国で騒ぎを起こして欲しくないんだけどね」


 そう! フィルが嘆いている通り、今回の世界の行く末すらも左右しかねない夏休みイベントが勃発するのは……ここ! 四大国が一角にして、ネフェリル帝国と並んで超大国と称されるレフィア神聖王国っ!!


「まっ、それは私達が防げばいいじゃん。

 それよりも……ここに向かってるのかな?」


「だろうね」


「ん〜まぁ、セドリックもイストワール王国の王子だし、フィルの家族この国の王族に挨拶しようって考えはわかるんだけど」


 王族が、それも王太子が他国を訪問するわけだし、挨拶するのは常識なんだけども!


「事前の連絡もなければアポもなしで、いきなり超大国の王族と会えると。

 それ以前にこの王城に入れると思ってるのかな?」


「思ってるんじゃない?」


 だとしたら……絶対に王城の入り口で揉めるだろうな〜。


「はぁ……先に謝っておくけど、私の婚約者がごめんね。

 本当、あんなのが王太子なんて、国の恥だわ」

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