第344話 逃げられなかった……
「本日は緊急事態につき、集まってもらってありがとうございます」
見た事も聞いた事もない、無数の触手を持つ巨大なタコ……千触手の怪物こと、サウザンドクラーケンも無事に倒し!
ルーへのお土産もしっかりと確保済み!!
魔法神である女神ティフィア様が治めている伝説の地。
神の国を探すための拠点である海底王国マリンニアへと、船ごと転移して一夜明け。
「さっそく本題に入りますが……」
船の甲板から場所は変わって、この2年でもはやおなじみとなった会議室にて!
目の前に勢揃いした面々……
一国の王ですら尻込みするであろう錚々たるメンツ!
私を省いた14人のSランク冒険者達に向かって、臆する事なく堂々と言い放つ!!
「っと、言うわけで! サウザンドクラーケンも倒した事ですし、今日からしばらく顔を出せません。
みなさん、よろしくお願いしますね!」
……ん? あれ? なんでみんな黙ってるの? というか何この微妙な空気。
い、いや、落ち着くのだ私! この程度で取り乱す私ではない!!
内心はバクバクしてるけど、表面上は澄ました表情をキープ!
ふふふ、どうだ! 王妃教育で鍛えられた我が鉄壁の仮面は!!
天才と称される数々の成績を刻んでいる私の、ポーカーフェイスを舐めるなよっ!!
けど……なんでみんな呆れたような顔とか、微笑ましげな視線を向けてくるんだろう?
「ふむ、なるほど……」
大賢者であるマリア先生達と並んで数えられる、伝説の英雄が1人。
冒険王と称されるガルスさんが、顎に手を当てて軽く頷き……
「嬢ちゃんが突拍子もない事を言い出すのはいつもの事だしな」
「へっ?」
し、失敬な!!
私がいたそんな事をいって! みんなもそんな事はないって思って……って、なんでみんなして納得してるみたいに頷いてるの!?
「と言うわけってのがなんなのかはさておき、まずそのサウザンドクラーケンってのはなんだ?」
「むぅ……」
みんなの反応は非常に解せないけど、まぁ今はいいや。
「サウザンドクラーケンとは、昨日私達が倒した魔物の事です!
無数の触手を持つタコみたいな魔物で、クラーケンの上位互換みたいな感じだったので私が命名しました!!」
まぁクラーケンはタコというよりも、イカみたいな見た目をしている。
でも足の本数は8本だし、分類状はタコ……のはずだから、今日の魔物をそう命名したわけだけど、我ながら素晴らしいネーミングセンスだと思うわ!!
「なるほど。
で? 何が、と言うわけで暫く顔を出せなくなるんだ?」
あれ? そういえばガルスさん達には、今日から始まったイストワール王立学園の夏休み期間中に私の未来を。
この世界の未来を左右しかねないほどの、一大イベントがあるって説明してなかったっけ?
前世の記憶の事とか、悪役令嬢としての私の立場や乙女ゲームの事は説明してるから、夏休みイベントの事も説明したと思ってた。
「ふふふっ」
そんなに知りたいのなら教えてあげよう!!
「実は今日から私が通っている……という事になっているイストワール王立学園の夏休みが始まるのですが、この夏休み期間中に以前説明した乙女ゲームの一大イベントがあるのです」
「乙女ゲーム?」
フラン先輩……いやまぁ、うん。
「フラン、貴女ね……」
オネットさんも呆れちゃってるけど、これでこそフラン先輩だしね。
「例のソフィーさんが悪役令嬢だっていうやつですよ」
「えっ? あっ! も、もちろん覚えてるよ!!」
「もう、フランちゃんったら……」
ミルバレッドさんの言葉を受けて言い訳するように言ってるけど……オラシオさんが苦笑いしてる事からもわかる通り、この場にいる全員に忘れてた事はバレてるから意味はない。
「それでソフィア、一大イベントって?」
ラピストさん! フラン先輩のせいで話が脱線してたけど、よくぞ聞いてくれました!!
「実は聖女エマの提案で、レベリングをするために近くのダンジョンに行く事になるんですけど……そこで魔王がバックにいる犯罪組織、
最後にシャドウのボスが持っていた通信用の水晶を通して、魔王へと宣戦布告する事になるのです!!」
「ちょっと待って」
「む? フィル、なに?」
「魔王に宣戦布告って、初耳なんだけど?」
「あれ? 言ってなかった?」
「言ってない。
まったく……どうして、そんな世界に関わるような重要な事を黙って……」
ま、まずい、どうにかして話を逸らさねば!!
「と、とにかく! 今日からしばらくの間は顔を出せません!!
では! そういう事ですので、私はこれで……」
「「「「「「ちょっと待て!!」」」」」」
くそっ! 逃げられなかった……
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