第335話 魔神と邪神

 夜の帳が下りて、月明かりに照らされた世界。

 煌びやかな光によって美しく照らし出されているイストワール王国の王都を眼下に見下ろし!


 王都の遥か上空で淡い月光を背に、ティーカップを傾けてミーシャが入れてくれた甘いココ……じゃなくて、大人なブラックな飲み物を一口。


「むふっ」


 これぞ! 優雅なる大人の夜の過ごし方っ!!

 葡萄ジュースを入れたワイングラスをくゆらせてるソフィーもなかなかだったけど、この私には及ばないっ!


「ふふっ、おかわりは如何ですか?」


「ん、ありがと」


 シルヴィアのお茶も美味しいけど、ミーシャのココアはやっぱり美味しいわ〜。


「あっ、ついにココアだって認めたね」


「むっ」


 煩いぞ、バカ邪神!

 というか、お前も私と一緒にミーシャ印のココアを飲んでるくせに!!

 というか、勝手に私の神域で寛いでる分際で偉そうにっ!!


「まっ、実際に私は偉いからね!

 なにせ私はこの世界の最高神様なんだから!!」


 うぜぇー。


「それよりも、そろそろ最高神の座につかない?」


「つかない」


「即答っ!? もうちょっと考えてくれても……」


 ここ400年あまり、事あるごとに私を最高神にしようとしてくるのは何故なのか?


「ネフェリアス、しつこい」


「ひ、酷いよ、悪魔ちゃんっ!」


 私がそんな面倒な事なんてするわけがないのに、いい加減諦めろ。


「悪魔ちゃんこそ、色々と好き勝手にこの世界を創り変えてるんだから、もう最高神になってくれてもいいと思うんだけど……」


「なんの事?」


 私が好き勝手に、この世界を創り変えてる?

 まったくもって心当たりがないんですけど?


「いやいやいや、世界樹に引き続いて全部で7つの迷宮ダンジョンを作ったり。

 覇気に付属効果をつけたり、結構色々やってるよね?」


 失敬な。

 迷宮はこの世界の不足していた魔素エネルギーを補うために必要だっし。

 覇気は絶対に今の方がカッコいいじゃんか!!


 つまりっ! 迷宮にしても覇気にしても、この世界に必要だったからしたまでの事。

 無論! それ以外にも世界に干渉して行った事は全て、必要だった事なのだよ!!


「えぇ……」


 なぜか邪神こと、この世界の最高神であるネフェリアスがちょっと引いてるような顔をしてるけど、細かい事は気にしない!!

 そんなことよりも今は……



『と、とにかく! エマ達への今後の対応を決めたいから、その……協力してくれる?』



「ふふっ、流石は私のソフィー」


 眼下に広がるイストワール王国が王都ノリアナの一角にある、ルスキューレ公爵邸で第一回対策会議中の可愛いソフィーの様子を見なければ!!


「あの子も可愛いよね〜」


「むぅ……」


「あはは、嫉妬しない。

 勿論、一番可愛いのは我が娘たる悪魔ちゃんだからね!」


 嫉妬なんてしてないし!

 とりあえずバカ邪神は無視するとして、あとは……



『ふふふ……ふはっはっはっはっ!!』



 うん、狂ったように狂乱してるけど、こっちも監視しておかないとね。



『あぁ、我らが真なる神よ、どうか今暫くお待ちください。

 400年に及ぶ宿願が叶う日は……偽りの神を廃し、この世界に真実の神がご降臨される日が!

 偽りの世界が真実を知る、来るべき日はもう間も無く訪れるでしょう!!』



 この羽虫天使の情緒の不安定さはともかくして……コイツの言う通り、コイツらが言う来るべき日ってやつはもうすぐ。


「ふふっ」


 あぁ、どうなるのかな? どんな顔をしてくれるのかなぁ?


「楽しみだなぁ〜」


「うわぁ、どこか楽しそうな邪悪な悪い顔。

 悪魔ちゃんのその顔は久しぶりに見たけど……やっぱり悪魔ちゃんは、悪魔で魔神だね」

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