第20章 ゲーム進行編

第336話 構いませんよ?

 昨夜、我が家で開催された第一回対策会議。

 この会議で決められた対処法は至ってシンプル! それは……可能な限りヒロインである聖女エマと、王太子セドリックを始め。


 宰相令息オズワルド・アイビー。

 騎士団長令息ガイルアレス。

 魔法師団長令息サイラス。

 ヒーローであるこの5人と関わらない事。


 とまぁ、当たり前というか。

 テンプレすぎる方針に決まったわけだけど……現在、イストワール王立学園の魔法訓練場にて。

 こうなるような気が、というか! こうなると確信してたんだよね〜。


「あ、あの、ソフィアさん! よろしくお願いしますね!!」


 若干緊張気味ではあるものの、ニッコリと笑みを浮かべて私に向かって元気よく頭を下げる聖女エマ。

 そして……


「エマ、そんなに緊張しなくても大丈夫だよ」


「そうですよ。

 ルスキューレ嬢は歴代最高の王妃になる事が確実視されている才媛ですからね。

 初心者のエマさんが怪我をさないように、しっかりと手加減してくれますよ」


 私と対峙するエマの隣に立って、親しげに優しく微笑みかけるセドリックとオズワルド。

 そしてさらにっ! そんな私達を見て騒つくクラスメイト達っ!!


「「……」」


 セドリック側に無言で控えつつ、冷めた目でセドリックとオズワルドを見ている不気味なガイルとサイラスは……まぁ、放置するとして。


 オズワルド! お前はなんで何勝手に私が手加減して当然、みたいな事を言ってくれてるの?

 確かにエマは魔法の扱いについては初心者と言っていい。


 だってこの世界に召喚されてまだ間もないし。

 エマがいたであろう世界、地球には魔法はおろか、魔力すら実在しないわけだし。


 けど! 異世界から召喚されて、聖女の称号を持つエマの魔力量は膨大!!

 獲得ているはずのスキルと加護で、光属性魔法や神聖属性魔法はもちろん、闇を省く他全ての属性を完璧に使いこなす。


 つまり、エマはこの世界に召喚された瞬間から魔法におけるエキスパートといっても過言じゃない。

 それに加えて、圧倒的とも言える膨大な魔力!!


 いくら天才の名を欲しいままにしている私といえども、流石に手加減をしていたら私が危ない……事もないですけど!

 四大国が一角たる魔導学園都市王国の十四魔塔の中でも、最高峰である第一魔塔所属しているのだ。


 乙女ゲーム内での私ならいざ知らず! 大魔道士であり、世界に15人しかいないSランク冒険者の一角たる私にかかれば、ちょちょいのちょいっとひねってやる事など容易なのだよ!!


「そうなんですね!

 私も全力で頑張るので、色々と教えてくれると嬉しいです……」


 いくら天才と言われていても未来の王妃の立場にあるだけの公爵令嬢が、膨大な魔力を持っていて、スキルと加護で卓越した魔法を施行できるエマに何を教えろと?


「ふふっ、構いませんよ?」


 乙女ゲームならばこの模擬戦でエマの圧倒的な魔法によって、私が恥を描く事になるんだけど……残念ながら乙女ゲームとは違うのだよ!!


「では、始めましょうか」


 まっ、乙女ゲームの流れ通りに進んでセドリックとの仮婚約がなくなるのは、私としても好都合だし。

 最終的には聖女であるエマにエマに花を持たせてあげるとして、とりあえず現実ってものを……私の力を見せつけてやるわ!!

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