第334話 暗躍する者

 コツ、コツ……



 壁も床も……何もかもが白く、厳かな空気に包まれた空間。

 どこまでも続いているようにも見える、閉ざされた空間の中央に鎮座するは美しい女神像が円卓を見下ろす厳かな神殿。



 コツ、コツ……



 そんな神殿に寄り添うように聳え立つは白亜の巨城。

 静寂に包まれた白亜の城の廊下に、靴が地面を打つ音が鳴り響く。


「っ……」


 この城に……この白き空間に1人。

 廊下を歩いていた存在が、整った眉をピクリと動かしてその歩みを止める。


「……」


 一面ガラス張りとなっている城の窓から、外に広がる白亜の空間を。

 その先をジッと見据え……


「そうか、ついに……」


 ポツリと言葉をこぼす。

 腰まで伸びた艶やかな金色の髪、全てを見通すかのような黄金の瞳。

 均平の取れた非常に整った容姿。


「ふふっ」


 そして……その背に広がる2対の純白の翼を揺らし。


「ふはっはっはっはっ!!」


 その男は歓喜に笑みを浮かべる。


「あぁ、我らが真なる神よ!」


 恍惚とした狂喜の笑みを浮かべる。


「ついに、ここまでやって来たのですね!!」


 彼の興奮して昂った感情によって、漏れ出た荒ぶる膨大な魔力が。

 強大な魔素エネルギーが白亜の巨城を……白き空間を震わせる。


「我が同志達……我ら光の使徒の最強幹部である十使徒のうちの3人。

 第十使徒、信仰のナルダバート。

 第九使徒、忍耐のペルセ・ベラン。

 第五使徒、純潔のシュルト。

 この3人を失ったのは想定外だった……」



 コツ、コツ……



 再び靴が地面を打つ音が鳴り響く。


「流石は〝特異点たる愛子〟と、偽りの女神の配下共。

 だか……問題は何もない! 確かに彼らは私の同志、信頼できる仲間ではあった。

 しかし、それだけだ」



 ガチャ、ギィ……



 廊下の最奥。

 表開きの扉が押し開かれ……目の前に広がるは、女神像が鎮座する荘厳なる神殿。


「確かに彼らを失ったのは、光の使徒にとって大きな損失だったのは間違いない。

 が、彼らは所詮、我らが真なる神の! 私の宿願を叶えるための駒の1つに過ぎない」



 パチンッ!



 男が指を打ち鳴らすと、円卓がその場から掻き消える。


「ふふふ……ふはっはっはっはっ!!」


 狂ったように笑みを浮かべ、笑い声を上げながら、嬉々として円卓を見下ろす女神像の前で恭しく跪く。


「あぁ、我らが真なる神よ、どうか今暫くお待ちください。

 400年に及ぶ宿願が叶う日は……偽りの神を廃し、この世界に真実の神がご降臨される日が!

 偽りの世界が真実を知る、来るべき日はもう間も無く訪れるでしょう!!」

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