第333話 第一回対策会議!!

 夜の帳が下り、心地よい静寂が王都を……閑静な貴族街を包む。

 ワイングラスを片手にくゆらせ、バルコニーに繋がるガラス扉から眩い王都の明かりを見下ろす。


「ふふっ」


 優雅に微笑みながら、ワイングラスを軽く傾けて一口。

 漆黒のドレスの裾を揺らして振り返りつつ、この部屋に集まった面々の顔を見渡し。

 みんなの視線を一身に集めながら部屋を歩く。


「ふふっ、ありがとう」


 できる侍女の如く、無言でスッと椅子を引いてくれたミネルバにお礼を言いつつ、洗練された所作で椅子に腰掛け……



 パチンっ!



 軽く指を打ち鳴らした合図を出す。


「はは……」


 すると何故か呆れたような苦笑いを浮かべながらも、執事服を見事に着こなしなウェルバーが先に着いている面々の前に資料を配る。


「という事で……では、これより第一回特別対策会議を開催します!」


 堂々と。

 そして重々しく開始の宣言を告げる!!


「えっと……ノリノリなところ申し訳ないんだけど、どういう事かな?

 こう見えて俺って結構忙しいんだよ? 今日も本当は船番だったのに、無理言ってロイさんに代わってもらったんだからね?」


「むっ……」


 そりゃあフィルは四大国が一角にして、ネフェリル帝国と並んで超大国と称される一翼。

 レフィア神聖王国の第一王子だし? 冒険者業以外でも忙しいのはわかるけど……


「フィルは仕事と仲間である私、どっちが大切なのっ!?」


「えぇ……」


 コレは私にとって命に関わる……かもしれない一大事なのだ!!

 長年の相棒で、もやはなくてはならない己の片割れみたいなものじゃんか!


 別に私が学園で苦労してるのに、フィルは船でのんびりしてるのはずるいとか。

 安心して落ち着くから、信頼できるフィルに近くにいて欲しかったなんて事は一切ないけど!!


 忙しいって言っても、フィルならすぐに王子としての公務くらい終わらせられるだろうし。

 私のためなら何を投げ出してでも、急いで駆けつけてくれてもいいじゃんか!


「ふふっ、さっきまでもノリノリで可愛かったけれど、珍しく拗ねてて可愛いわ」


 へ? ル、ルミエ様……?


「えぇ、本当に」


「もうずっと見ていられますね」


 フィアお姉様、ディアお姉様……別に私は拗ねてなんて。


「ルミエ様」


「当然、しっかりと記録しているわよ」


「流石ですね」


 お母様とミネルバまで……


「あぁ! ソフィーが、ソフィーがぁっ!」


 えぇ……お父様がなんか号泣してるんですけど……


「喜ぶべきなんだろうけど……素直に喜べないね」


「ぐっ……」


 アルトお兄様はまだいいとして、エレンお兄様はなんで胸を押さえてっ!?

 だ、大丈夫だとは思うけど……


「フィルも大変ですね」


「あはは、まぁ否定はできないかな」


 というか! ウェルバーとフィルのこの仲良しって雰囲気はなに!

 いつの間に、そんなに仲良くなってたのっ!?


「と、とにかく! エマ達への今後の対応を決めたいから、その……協力してくれる?」


「「「「「「「「「っ!!」」」」」」」」」


 特に! ガイルとサイラスよ様子がおかしすぎる!!

 いやまぁ普通に考えれば全然おかしくないし、寧ろ側近として主人を諌めるのは当然の光景なんだけども。


 乙女ゲームの中ではセドリックと一緒になって、エマを擁護して私の事を蔑んで貶めるはずなのに……何今日のあの2人の態度は!!

 これは早急に対応策を模索しなければっ!

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