第332話 なんなのこの状況はっ!?
「ご機嫌よう」
う〜ん、ミスった。
せっかくあんな気まずい登校時間を経て、久しぶりに来たんだから今日一日くらいは最後まで学園で過ごそう……なんて思ったのが間違いだった。
さて、どうしたものか……周囲から突き刺さる、この好奇の視線。
そりゃあセドリックは私の婚約者なわけだし、そんなセドリックが他の女性を腕に抱いて現れたらこうなるよね。
まぁ貴族というのはゴシップが大好きだし。
突然降って沸いた王太子とその婚約者、大物のゴシップなんて眉唾だろう。
下手をすれば社交界のパワーバランスが変動するわけだし。
「あの! 今から私達、カフェテリアの個室でお茶をするんですけど、ソフィアさんも一緒にどうですか?」
さらに教室中が騒めくっ!
さぁ! 盛り上がってまいりました!!
「あら」
こうなったら私ももう楽しんでやるわっ! 私の悪役令嬢っぷりを刮目せよっ!!
「ふふっ、私が貴女と、ですか?」
誰もが見惚れてしまう、洗練された優雅な所作で徐に扇を広げて口元を隠しながら優美な。
それでいて見下すような冷たい笑みを浮かべて見せる。
「申し訳ありませんが、この後用事がありますの。
せっかくですが、お茶はご遠慮させていただきますわ」
ふっふ〜ん! どうよ?
我ながら完璧な優雅で魅惑的な悪役令嬢だと思う!
それに用事があるっていう言葉自体に嘘はないし、ここでエマの誘いを断ったのは正当なんだけども……
「そんな! 私がいるからって酷いっ!!」
はい、きました〜!!
瞬時に目をうるうるさせて、涙を浮かべてみせたのは流石はヒロインというべきか。
ふふふ、エマもなかなかにやるわね!
まぁ、私がいるからって酷い! ってのはどうかと思うけど。
婚約者の腕を抱いてる女に一緒にお茶をしましょうって誘われても、一緒に楽しくお茶なんて誰もしたくないと思うのが普通の反応でしょうに。
まぁ私としては別にセドリックともお茶なんて一緒にしたくないから、エマがセドリックと仲良くしてくれても全くもって問題ない。
寧ろもっと仲良くなって、私をセドリックの呪縛から解放して欲しい!! 頑張れ、エマ!!
「エマ……大丈夫?」
「エド……」
涙ぐんで悲しむ
そして見つめ合う2人!!
仮にも婚約者の前でコレはどうなんだろ?
「ソフィア、その言い方はないんじゃないかな?
エマはソフィアと仲良くなろうとしているだけだろう?」
いいね、いいね!
対立するヒロインと悪役令嬢、そして婚約者である悪役令嬢ではなくヒロインの肩を持つヒーロー。
いかにもない展開になってきたじゃん!!
さてさて! ここからがクールでカッコいい、孤高の悪役令嬢たる私の腕の見せ所ね!!
いい感じにセドリック達を言い負かしてやって、後は自然な流れで優雅にフェードアウトすれば完ぺ……
「殿下、ここはルスキューレ嬢が正しいかと」
えっ?
「えっ?」
あっ、心の声が完全にエマとはもった……じゃなくて! ど、どうなってるの!?
「ガイくん?」
「エマ嬢、何度も言っていますが、その呼び方はやめていただきたい」
ほ、本当ならセドリックと一緒になって私を責め立てるはずのガイルがまともな事を言ってるっ!!
「そうですね。
婚約者であるルスキューレ嬢が、別の女性と共いる殿下を見て不快に思われるのは至極当然。
ましてや一緒にお茶など、断られるのが当然かと」
サ、サイラスまで!?
いや、別に不快にはまったく思ってないけど。
それより! なんなのこの状況はっ!?
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