第331話 修羅場ってやつだ!!

 気まずい登校時間を経て、学園に到着してから数時間。

 なんとか気持ちを持ち直して、午前の授業を終えて今は昼休みなんだけど……ふむ。


「おかしいですね」


『あら、どうしたの?』


 だって……せっかく久しぶりにこっちの学園に登校したのに、誰も私に話しかけてこない!!

 登校するときも思ったけど、なにこの状況っ!?

 確かに私はこっちの学園には滅多に来ない。


 公にはしてないだけでエルヴァンおじさんやフローラ様を始め、学園長とかも私がオルガマギア魔法学園に入学してる事は知っているし。

 私がこっちのイストワール王立学園に登校するのは、本当に卒業するのに必要最低限の出席日数分のみ。


 無論、これは許可をもらった上での事だけど。

 そもそもその数少ない登校も、いつもはルーに私のフリをして登校してもらってるから、私本人がこの学園に来るのは本当に滅多にないレアケース。


 それこそ前回、私自身が登校したのは4年前の入学式のときだけじゃないだろうか?

 ん? ちょ、ちょっと待って! 前回登校したのが4年前の入学式のときだけってのは流石に……


「うわぁ……」


 う、嘘でしょ? マジですか?

 自分で回想してて、衝撃の事実に愕然としちゃったんですけど……って! そうじゃなくてっ!!


 問題なのは周囲からの視線は結構感じるけど、誰も話しかけてこないどころか、近づいて来る人すらいない。

 これじゃあまるで悪役令嬢じゃない! あっ、私って悪役令嬢だった。


 とはいえ! まさかここまでの孤高のボッチっぷりを発揮してしまうなんて!!

 偶に私の代わりに登校してもらってるルーからは、いつも問題ないって報告を受けてたのに。


 いやまぁ確かにほとんど登校もしてないし、仲のいい友達がいな……げふん! げふんっ! 少ないのは仕方ないのかもしれないけどさ。

 それにしたってコレはないでしょうっ!!


「はぁ……ルミエ様、慰めてください」


『ふふっ、仕方ないわね』


 これでも私は今やイストワール王国で最も勢いがあって、最も影響力があるルスキューレ公爵家の令嬢で。

 さらには未来の王妃様だよ?

 にも関わらず、この見事なまでのボッチっぷりっ!!


 うん、これは猫ちゃんサイズのルミエ様を抱きしめるアニマルセラピーだけじゃあ、傷ついた私の心は癒せない。

 帰ったらルミエ様のお腹に顔を埋めて、膝枕をしてもらって頭を撫でて慰めてもらおう。


 ここまでショックを受けたのは、15歳になったのに私の想定よりも身長が伸びなくて。

 なにより! 隆起の少ないボディラインに打ちのめされたとき依頼だわ。


 でも私は諦めないっ!!

 確かに乙女ゲームでの私はスラっとしたボディラインで、ヒロインであるエマと比べればその戦闘力は脆弱。

 豆鉄砲と言って差し支えない程度だったけど……


 所詮は創作の世界の話!!

 お母様は社交界の華と称される、ボンキュボンの美女なのだ!

 まだ私は15歳だし、お母様の血を引いている私もいずれは遥かなる偉大な力をこの手に……



 ────!!



 私の超重要な思考を邪魔するように、教室内にざわめきが広がり……


「ふふっ、もう! セドくんったら〜」


「まったく……エマ、そんなに近いたら危ないよ?」


「えぇ〜、これくらい大丈夫だよ〜」


「エマさんは面白い方ですね」


「むっ! オズくん、エマって呼んでって言ったでしょ!」


「ふふっ、すみません」


「「……」」


 などと楽しげに話しながら、セドリックと側近候補の3人、そして聖女エマが入って来た。

 セドリックの右腕に抱きついたエマをくっ付けたまま……


「これは……」


「なんてはしたない!」


「ソフィア様がいらっしゃるのに……」


 とまぁ、そこら中でコソコソとされてるわけだけど。


「あっ! ソフィアさん、こんにちは!!」


 エマの言葉を受けて、教室中の視線が孤高のボッチたる私に突き刺さる。


「……」


 これは……あれだ! いわゆる修羅場ってやつだ!!

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