第330話 気まずい登校
「えっと……」
どうして、こんな事になったんだろう?
イストワール王立学園の入学式も終わって、今日から新学期が……乙女ゲームの時間軸が本格的に開始するわけだけど。
それでも、今日の私は起きた時から超ご機嫌だった!
なにせ! 昨日は乙女ゲームの内容通り、セドリックとエマが出会う場面を目撃したし。
エマをお姫様抱っこで、カフェテリアの個室まで連れ込むところもしっかりとこの目で確認した!!
つまり!! これでやっと……5歳の頃からちょうど約10年間に渡って続いてきたセドリックによる嫌がらせが!
かけられ続けてきた迷惑とストレスが! やっと終わるという事っ!!
これからは早朝にセドリックが公爵邸に乗り込んでくる事も、私の部屋に勝手に押し入ってくる事も。
私のファナを侮辱したり、急に抱きしめようとしてきたりする事もなくなるっ! そう思ってたのに……
「ソフィア、なぜ昨日はカフェテリアに来なかったの?」
乙女ゲームの舞台となる4年生最初の1日くらいは、ルーに任せずに自分で行こうと思うくらいには機嫌がよかったのに!
なんで
「あの、私が口出しする事じゃないと思いますけど……約束してたのに、なんの連絡もなしに約束を破るなんて酷すぎます!
ソフィアさんはセドリックくんに謝った方がいいと思います!!」
私の顔をじっと見つめるセドリック、セドリックの隣に座って私に謝れた迫るエマ。
なにこの状況? そもそもなんで私はセドリックの馬車に乗って、学園に向かってるわけ? なにこの気まずい登校?
というかなんで私は部外者のエマに、謝るように言われなきゃダメなの?
それ以前に仮にも公爵令嬢で、準王族の立場である私の許可もなく名前を読んでるし。
それ以外にも仮とはいえ婚約者である私を差し置いてセドリックの隣に居座ってるし。
いやそれは別にいいんだけど、とにかく色々と無礼すぎるでしょ……まぁ、とりあえずエマの事は無視するとして。
「……」
まずい、なんて答えよう?
乙女ゲームでは今日からは基本的に朝はエマと一緒に登校、学園では学園の案内という名目で一緒に行動をするようになるし。
私の助言で国王であるエルヴァンおじさんからも、王家の身勝手でこの世界に連れてきてしまったエマの事を気にかけてやってほしいって指示もあったはず。
なのに……なのにっ!
くっ、なんて答えれば……エマと一緒にいるところを見たからって言えば、なんか私がエマと一緒にいるセドリックを見てショックを受けたみたいだし。
てっきりもう早朝に公爵邸に乗り込んでくる事はないだろうと踏んでたから、答えを用意してなかった……
「少し急用ができたのです。
殿下には我が家の者に言伝を……」
「もしかして、昨日カフェテリアの個室で私がエマと一緒にいる所を見たのかな?」
「はっ?」
えっ、なに? いやまぁ、それはその通りなんだけども……人の話聞いてました??
「なるほど、それでショックを受けてしまったんだね」
いやいやいや! 違うからっ!!
セドリックがエマをお姫様抱っこしたまま、カフェテリアの個室に入って行くのを見届けてから意気揚々と帰ったけど! ショックなんて一切受けてないから!!
「あはは、なるほどそれで」
なんか勝手に納得してるし。
「はぁ……」
本当に昔から話が通じないんだよなぁ……
「安心して、確かにエマはいい子だけど、私の婚約者はソフィアだけだから」
「……」
いや、隣にエマを座らせて、さらには名前で呼ばせてるくせにそんな事言われてもね。
「あはは、けど嫉妬してくれるソフィアも可愛いね」
「っ……」
うわぁ、セドリックのウィンクのおかげで鳥肌がたった。
うん、もう無理だわ。
学園に着いたら転移でお家に帰って、今日もルーに頑張ってもらおう。
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