第19章 ゲーム開始編

第326話 今日で見極める!

 聖女エマの今後と、異世界召喚を行なってしまった事実をどう各国に通達するのかを決めるための会議より約2週間。

 今日はイストワール王立学園の入学式!!


「新入生の皆さん、こんにちは。

 生徒会長のセドリック・エル・イストワールです」


 王族かつ先日、ついに王太子となった我らが第一王子セドリックが壇上に立ち。

 それはもう王子様然とした爽やかな微笑みを浮かべて、新入生達へと答辞を述べる。


 新入生の女子達は頬を赤く染めてセドリックを見つめ、男子達は憧れに瞳を輝かせる。

 まっ、この時点ではセドリックは文武両道で優秀な王太子だから、新入生達のこの反応も納得できるんだけど……問題は今日!


『ふふっ、今日判断するために婚約者とも今まで距離を置いてきたわけだしね』


 ルミエ様の言う通り! 乙女ゲームの内容に酷似してるけど、乙女ゲームじゃなくて現実だって事は理解してる。

 それでもこれまで仮という事もあって、婚約者ながらセドリックとは距離を置いてきた。


 それは全て、今日という日にセドリックを……私達の運命を見極めるため!!

 まぁ、普通にセドリックが嫌いってのもあるけど……とにかく!


 明日から始まる新学期に編入生という形で、私やセドリックと同じ4年Aクラスに編入してくる聖女エマ。

 彼女は今頃、明日からの学園生活に備えてこの学園を見学しにやって来てるはず。


 そして……生徒会長として新入生への答辞を終えたセドリックに出会う。

 この前の会議ではセドリックが王都にいなかったし、それからも互いに忙しくてまだ面識がない2人が今日! 乙女ゲームのように初めて出会うっ!!


「そして……」


「皆さんもご存知の通り、我が校の校訓に学生は平等というものがあります。

 しかしながら、これは身分に関わらず学問に励むという意味であり、身分を蔑ろにして好き勝手していいわけではありません」


 こんな事を言ってるセドリックは私という婚約者がいるにも関わらず、自覚はないかけどエマに一目惚れ。

 徐々に自身の気持ちに気づいて惹かれていき、公爵令嬢たる私を蔑み、蔑ろにするようになる……か、どうかは全て今日判明する。


『ねぇソフィー、もし仮に彼が聖女に傾倒しなかったらどうするのかしら?』


 それは……そうなった時は仕方ないので、セドリックと結婚しますよ?

 これでも! 私は公爵令嬢としての自覚もあるし、その責任もしっかりと理解してますからね。


『自覚と責任、ね……』


 ま、まぁ確かに冒険者になって、しまいにはSランクまで昇り詰めたり、公爵令嬢……というか、貴族の令嬢としてはあり得ない事はそれなりにしてますけど。

 それはそれ! これはこれなのですよ!!


「以上で、私からの挨拶は終わりですが……最後に、1人の先輩として一言。

 人生で一度きりの学生生活。

 この学園でしか得られない経験も必ずある、全力で勉学に励み、全力ででこの学園での生活を楽しんで」


 セドリックが王子様スマイルを浮かべると同時に、講堂ないが盛大な拍手に包まれる。

 しかし……


「はぁ……」


 今日で私達の今後を見極めるつもりなのはそうなんだけど。


「待たせたね」


「いえ、素晴らしいご挨拶でした」


 なんで今日この入学式でする事もなく、生徒会役員でもない私がセドリックに付き添って入学式に参加しなくちゃダメなわけっ!?

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