第325話 聖女の一幕

「ふぅ〜」


 やっと1人になれた。

 しかし、さすがは王宮の一室ね……この部屋に来るまでもそうだったけど、まさに豪華絢爛!

 この部屋も凄く広いし。


 さっきまでいた学校の体育館くらいの広さがある、会議室もすごかったし。

 まさしくアニメやゲームとか、テレビで見た海外の王宮って感じで、とにかく凄いとしか感想が出てこない。


「う〜ん!」


 召喚されてから今日までいた客室もすごかったけど、こっちの部屋はもっと凄い!

 まぁ凄すぎて、まだちょっと慣れないけど……


「疲れたぁ〜」


 部屋の中にある扉を開けて、寝室にあるテレビとかでしか見た事がない天蓋付きのベッドに倒れ込む。


「うわっ! すごっ……」


 なにこのベッド! めっちゃふわっふわ!!

 やばい! この部屋が私の部屋とか、ちょっと……いや、かなり嬉しいかも!!


「はぁ〜」


 いきなり召喚されちゃった時は、どうなるかと思ったけど……


「まさかの乙女ゲーム


 大ヒットしてた乙女ゲーム……


「あれ?」


 あの乙女ゲームの名前ってなんだったっけ?


「う〜ん……思い出せない」


 記憶の一部があやふやになってるとか……


「もしかして、転生した事による後遺症?」


 いや、でもそれ以外の事は普通に覚えてるし。

 まぁいいや、そんな事より! 主人公の名前が私と全く一緒で、私もドハマりしたあのゲーム。


 最初、王様達に説明された時はもしかしてって思ったけど……国の名前も、王様や王妃様、それ以外の登場人物の名前も一致してるし間違いない!

 ここはあのゲームの世界っ!!


「でも……」


 ラノベとかアニメとかだと、乙女ゲームと酷似してるだけでゲームとは別の世界って事も大いみたいだし。

 何よりさっきの会議にいた……悪役令嬢であるソフィア・ルスキューレ公爵令嬢。


 スラっとした体型に、輝くような白銀の髪と、アメジストのような綺麗な紫の瞳。

 私から見てもわかる洗練された所作に、どことなく漂う高貴な雰囲気……なにあの完全無欠な超絶美少女っ!!


 確かにゲームのパケとかでもめっちゃ美人だったけど……実物はそれ以上じゃん!

 というか、本来ならあの会議に悪役令嬢であるソフィアは出席していないはず。

 にも関わらず、ソフィアがあの場にいたって事は……


「この世界は乙女ゲームに酷似してるだけで、ゲームとは違う世界である可能性が高い。

 もしくは……あの子も転生者の可能性がある?」


 悪役令嬢に転生した主人公が、破滅を回避するために奔走するのはもはやテンプレだし。


「う〜ん」


 今日の会議では最初の方にちょっと話しただけで、あとはずっと月の女神の2つ名に相応しい美しい微笑みを浮かべて黙ってたし。

 今日の様子だけだと判断できないな〜。


「今度、探りを入れてみないと」


 悪役令嬢であるソフィアに不幸になってほしいわけじゃないけど……


『──』


「っ!」


 なに! 今一瞬、何か聞こえたような……


「まっ、いいか。

 それよりも!」


 せっかく女神様のおかげで、大好きな乙女ゲームと思われる世界に転生できたんだし。

 せっかくなら攻略対象達のイケメン達を攻略して、幸せになりたいもんね!!


「それでソフィアが不幸になるのは仕方ないよね〜」


 可哀想だけど、悪役令嬢なんだから仕方ない!


「けど、まさか自分自身が転生トラックを体験する事になるとは……」


 苦笑いしか出てこないけど、こうなっちゃったからには仕方がない。


「とりあえず! 乙女ゲームの覚えてる内容を紙に書き出さないと!!」


 乙女ゲームの舞台となるイストワール王立学園の新学期が始まって、私が編入するまであと2週間ほど。

 やっぱり王道のセドリック? それとも他の攻略対象がいいかな〜?


「ふふっ」


 あぁ、学園乙女ゲームが始まるのが楽しみだわ!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る