第324話 受けてたってやるわ!!
さてさて、聖女エマが私の前世の記憶にある世界と同じ世界から召喚されて。
乙女ゲームの事も知ってるだろう事がわかったから、もうこの場に要はないんだけど……
「と、いうわけだ」
エルヴァンおじさんの説明を聞き終わって、再び難しい顔で静まり返ってるし。
この空気の中、じゃあ帰ります! って退出するわけにもいかない。
かといって、ここで会議の進行役を買って出て、これ以上目立だちゃうのも嫌だし。
でもこのままだと長引きそうだしなぁ〜、どうしたものか……
「先に言っておくが、皆に集まってもらったのは今回の一件における責任であったり、異世界召喚の是非を論ずるためではない」
「なっ! 不敬を承知で言わせていただきますが、陛下は異世界召喚という禁忌を犯した、王家の罪をなかった事にするおつもりですかっ!?」
「そうではない。
今回の一件は完全に王家に責任がある、そんなわかりきった事を論じても時間の無駄だと言っているのだ」
まぁ確かに今回の異世界召喚は王家の……というより、前王と前王妃の独断だもんね。
「そんな事よりも、今回の一件をどう各国に通達するのか。
そして何より、召喚されてしまったエマ嬢の今後についてを議論したい」
今回の会議の目的は、第一に聖女エマの今後、次いで今回の一件をどう各国に通達するか。
事前にエルヴァンおじさんから聞いてた通り、やっと本題に入ったわけだけど……
「何か意見のある者は遠慮せずに申してほしい」
「「「「「「「……」」」」」」」
この2つはそう簡単には決められない。
イストワール王国は歴史こそ深いけど、規模で言えば中堅国家で別に大国ってわけじゃないし。
国際的に見ても、重要な立ち位置にあるわけでもない。
まぁ確かに魔王討伐とか、最年少Sランク冒険者誕生日とかで、ここ数年ほどで一気に注目度が上がってはいる。
けど、それはあくまでもルスキューレ公爵家あっての話。
異世界召喚した時に前王エルビル達がエルヴァンおじさんに言っていたように、はっきり言ってイストワール王国というよりルスキューレ公爵家が注目されているだけ。
そんな微妙な立ち位置で、禁忌魔法である異世界召喚を行ったなんて発表すればどうなるか。
かと言ってこの事実を秘匿すれば、露見した時の各国からの非難は凄まじいものになるは明白。
聖女エマにしたって、過去400年間もの間、異世界召喚で召喚された者は1人としていなかったわけで。
歴史は重んずると言ったら聞こえはいいけど、保守的な貴族達がエマを抱え込むとは思えない。
それに……
「あ、あのっ!」
いきなり達がって声を上げるエマに視線が集中する。
「まだちょっと混乱してるし、詳しい事はわかりませんけど……皆さんの迷惑になるのなら、私ここを出て行きますっ!!」
まぁやっぱり、そう言うよね。
乙女ゲームでも召喚されてからすぐの会議に出席したヒロインである聖女エマが、全く同じセリフを口にするんだから。
そりゃまぁ、乙女ゲームの事を知ってるんだったら、その内容を踏襲しようとするのはわかる。
だって乙女ゲームの通りに進めば、聖女エマには幸せな未来が待っているわけだしね。
つまり! 聖女エマの今のセリフは、この私に対する明確な宣戦布告を意味するのであるっ!!
まぁエマは私には前世の記憶あり、乙女ゲームの事を知ってるなんて思ってもないだろうけど。
「それはできない。
我らの事情でこの世界に引き摺り込んでおきながら、キミを放り出すなど決して許されない」
そもそもエマの事を放り出すなんて選択肢は最初から存在しない。
エルヴァンおじさんが言ってる事以外にも、エマを放り出して後で何かあったら各国からなんて言われるかわかったもんじゃないし。
「国王様……!」
「エマ嬢も何か希望があれば言ってほしい。
全てを叶えるとは言えないが、可能な限りキミの希望に沿うと王家が責任を持って約束しよう」
「ありがとう、ございます……!!」
涙ながらにエマがお礼を言ってるけど……ここまで綺麗に乙女ゲームの内容通りなんだよね〜。
となると、恐らくエマは王家が後ろ盾となって、客人という形で王宮に留まる事になるはず。
「ふふっ」
そして学園の新学期が始まれば……面白いじゃない!
そっちがその気なら、正々堂々と受けてたってやるわ!!
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