第323話 確認事項
とまぁ、そんなこんなで結局、聖女エマの今後を決定するための会議に出席する事になったわけだけど……
「う〜ん、間違いない……かな?」
この会議に出席しているのは、今回の一件の黒幕である前国王王妃の2人。
実行犯である宰相補佐ヤムザ・ボルヴィットと、魔法師団所属の宮廷魔法使い。
宰相イーサン・アイビー侯爵。
王国騎士団の総騎士団長バリアード・アレス伯爵。
魔法師団の団長イグリッド・エドウィン侯爵。
王姉であり、騎士団と魔法師団を統括する総帥ネヴィラ・ルイーザ公爵。
エルヴァンおじさんとフローラ様、両陛下は当然としてセドリックを省く王家の面々。
他にも各大臣や、社交界で影響力のある大貴族達。
とまぁ錚々たる面々! そして……
「えっと……は、初めまして!」
エルヴァンおじさんに紹介されて、おどおどとした怯えたような態度で挨拶をした黒髪黒目の少女こと。
「
前国王エルビル・エル・イストワール、前王妃ドリヴィラ・エル・イストワール。
この両者の暗躍によって異世界より召喚された……聖女エマ。
「経緯は後程、詳しく説明するが。
まずこれだけは言っておく、このエマ嬢は異世界より召喚された聖女だ」
続くエルヴァンおじさんの言葉を受けて、会議室内がどよめいたけど。
いかに国の重鎮達といえども、こればっかりは仕方がないと思う。
なにせ……異世界召喚とは、その昔この世界に大いなる混乱を齎した大戦。
約400年前の聖魔大戦が勃発する切っ掛けとなったとされる魔法。
聖魔大戦が集結したあと、魔法神ティフィア様によって禁忌魔法に定められており。
以降400年に渡って四大国を筆頭とする各国の連盟によって、使用を固く禁じられてきた魔法だもん。
「お、お待ちを!
陛下、それはつまり、異世界召喚が行われたと?」
まず声を上げたのは、ルスキューレ公爵家とも関わりが深い外務大臣。
「……そうだ」
「っ!! これは由々しき事態ですぞ!!」
まぁ各国の連盟で禁止されている禁忌魔法を使っちゃったわけだしね。
他の国と密接に関わる仕事をしてる、外務大臣が焦るのも至極当然といえる。
「各国になんと通達すれば!」
「異世界召喚といえば、禁忌魔法ではないですかっ!」
「そもそも! 何故そのような事をっ!?」
「皆様、ひとまず落ち着いて」
「これが落ち着いていられるかっ!!」
おぉ〜、凄い騒ぎだ。
エルヴァンおじさんやフローラ様は一旦落ち着くまで静観する姿勢だし……仕方ない。
パンッ!!
軽く魔力を乗せた柏手を打って……
「皆様の不安もよくわかります。
しかし、ここで慌ててもどうにもなりません。
まずは陛下のご説明を伺いましょう」
一斉に静まり返った会議室で、優雅で気品に溢れた声音と所作! それでいて有無を言わせない圧を持って告げる。
「ふふふ」
海千山千の貴族達だろうと、今の私にかかればこの通りなのだよっ!!
「では陛下、詳しい経緯をお教えいただけますでしょうか?」
「あぁ、無論だ」
はぁ……本当は目立つような事は、したくなかったのに。
まぁ今のはこうでもしないと話が進まなかっただろうから仕方ないけど……だからこんな会議に参加しなくなんてなかったんだ。
お家からでも魔法でこの会議を覗き見る事もできたわけだし。
が、しかし! 参加する事になったからには、この際に確認しておかなければならない事がある!!
それは……突然異世界に召喚されてしまって、不安と困惑、そして恐怖に満ちているだろう聖女エマ。
彼女が本心ではこの状況をどう思っているのか、正確にはこの世界……前世の記憶にある乙女ゲームを知っているのか。
「ふふっ、なるほど」
確かに一見、突然の出来事に困惑して、不安がっているか弱い少女に見えるけど……私の目は誤魔化されないっ!!
エルヴァンおじさんと一緒に会議室に入ってきた私を見て、一瞬だけど嬉しそうに笑ってたし。
さっき私が貴族達を嗜めた時なんかは、他の人達にバレない程度に私の事を睨んでた。
これはもう確実だろう。
聖女エマ……彼女は乙女ゲームの事を知っている!
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