第327話 どうなるかな〜
「アレ見て!」
「まぁ! アレは……!!」
「あの方は……」
「なんてお似合いなのかしら!?」
コソコソと……は、してないな、うん。
普通に騒ぐ新入生達の視線を一身に受けて、セドリックと立ち並んで学園の廊下を歩く。
おかしい。
入学式も終わって、本来ならこれからの学園生活に思いを馳せたり、親交を深めたりしているはずなのに。
まさかセドリックと一緒に歩いてるだけで、ここまで注目を受ける事になるとは……
「ははは、かなり目立っているね」
「そのようですね」
周りでキャッキャと騒いでる新入生達には、仲のいい婚約者同士に見えているだろうけど……失敗した!!
今日初めて出会う……事になるかもしれない、セドリックと聖女エマを私自身の目で直接見極めようと思ってたけど。
こんな事になるならルーに来てもらえばよかった!!
乙女ゲーム云々を抜きにしても、はっきりいって好きじゃない。
むしろ嫌悪感すらあるセドリックと一緒に、仲良く行動を共にしないとダメだなんて。
「はぁ……」
「どうかしたかな?」
「いえ、なんでもありませんわ」
それよりも……あまり密着しないで欲しいんですけどっ!?
うぅ〜……歩き難いし、何より背筋がゾワゾワする!
「ははは、怒っているのかな?
先日は無理矢理押しかけてしまって、申し訳なかった」
「いえ……」
確かにこの前の誕生日パーティーで、招待してないのに乱入してこられたのは迷惑だったけど。
そんな事よりも! 気持ち悪いから腰を抱き寄せるのはやめてくれないかなっ!?
「殿下、歩きづらいのでもう少し離れて欲しいのですが……」
「そう? 別に恥ずかしがらなくてもいいんだよ?」
いやいやいや! 恥ずかしがってないから!!
ひぅ……さっきから鳥肌と悪寒が止まらないぃっ!
「別に恥ずかしがっては……」
普通に嫌がってるだけで。
「あはは、恥ずかしがっているキミも美しいね」
が、我慢だ! 今すぐ腰に回されてる手を捻り上げてやりたいけど、我慢するのだ私っ!!
ちょっと距離感が近いけど、婚約者としてならあり得ない程じゃない。
それにこの場には周囲の目もあるし、ここで仮とはいえ婚約者であるセドリックを拒絶するわけにはいかない。
いかないけど……ここ最近、セドリックが向けてくるねっとりとした視線が気持ち悪いっ!!
しかも、今は実際に腰を抱き寄せられて、不自然じゃない程度とはいえ密着されてるし!
そもそも今日の目的は、邂逅したセドリックとエマがどうなるのかを見極める事!!
な、なんとかして違和感なくこの場から離脱しなければ……
「殿下、申し訳ありませんが、実は先生に用事がございまして。
先にカフェテリアに向かって下さい、私は後から合流いたしますので」
「いや、それなら私もキミと一緒に……」
「いえ! 殿下のお手を煩わせるわけにはいきませんわ。
それに……これはアルトお兄様から頼まれた事で、まだ極秘の情報ですので」
ふふふ〜ん! どうよ? アルトお兄様は次期公爵にして、魔塔の最年少賢者でもある。
こういえばセドリックも引かざるを得まい!
実際にアルトお兄様から頼まれた事もあるし……私自身も用事があるから嘘じゃないし。
これでこの状況から抜け出せる……はず!!
「極秘? それは私にも?」
「えぇ、殿下にもです」
「そうか……キミがそういうなら仕方ないね。
じゃあ名残惜しいけど、先にカフェテリアの個室で待っているよ」
「かしこまりました」
よしっ!
「じゃあ、また後で」
「はい、殿下」
まっ! 後で私がカフェテリアに行くかどうかは、セドリックがエマと出会ってどうなるのかによるけども!!
さぁ! どうなるかな〜。
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