第315話 さすがは竜王

 海の覇者と称される海竜。

 その頂点に君臨し、海底の大都市……海底王国マリンニアを統べる女王。


 本来は美しい青色の鱗を持つ美しい竜種ドラゴンであり。

 人化した姿では、腰あたりまであるサラッサラな青い髪と瞳をした絶世の美女!

 海竜の竜王マーレさん!!


「はぁぁ〜!」


 なのに! 凛々しく美しい絶世の美女で、誇り高く気高い竜王様なのにっ!!


「ソフィーさんのほっぺ、スベスベですぅ〜」


 なんなのこの状況はっ!?

 マーレさんの案内で、美しい海底都市を観光しながらお城に招かれたのはいいよ?


 この都市にいる人達……というか存在達のほとんどが高位の存在。

 冒険者ギルドの危険度いう特Aランク、災禍級以上なのもまだなんとか飲み込めた。


「うぅ……」


 けど! けどっ! なんで私は今、誇り高き竜王であるマーレさんに抱きしめられて、撫でくりまわされながら頬ずりされてるわけっ!?


 さっきまでは確かに優雅で美しい女王様って感じだったし。

 女王として、竜王としての威厳もたっぷりあった。

 なのに……ものの数時間でこの豹変ぶりっ!!


「ルミエ様」


 これってどういことなんですか!

 ていうか、どっちがマーレさんの本当の姿なのっ!?


「ふふふっ、変わってないわね。

 実はマーレはすごくお酒に弱くて、ちょっとお酒を飲んだだけでこうなってしまうのよ」


「へっ?」


 な、なんですと!!

 なるほど、だから晩餐のときにはガルスさん達にはお酒を振る舞っていたのに、自分は飲んでいなかったんだ。


 それで晩餐会も終わって、Sランク冒険者の女性陣と一緒に女子会を開始して。

 ルミエ様に無理やりお酒を飲まされてこうなったと……


「って、ルミエ様っ!?」


 それじゃあマーレさんがこうなるとわかってて、わざとお酒を飲ませたってことじゃないですか!!


「なんで……」


「なんでって……そっちの方が面白そうじゃない」


「ルミエ様……そんな理由でお酒を飲めない人に、無理やりお酒を飲ませるのはやめてくださいっ!!

 そのせいでわたぷっ!?」


「うふふ、ギュッてしちゃいますよ」


 もう! まともに喋ることもできないっ!!

 この海底王国の女王にして竜王であるマーレさんに失礼かもしれないけど……誰かこの酔っぱらいをどうにかしてっ!


「ぷはっ! そのせいでこうして、私という被害者が出てるんですからね!

 猛省してくださいっ!」


 そして……


「面白そうな見てないで、誰か助けてよぉ〜!!」


 イヴさんも、オネットさん、フラン先輩も、オラシオさんも、ラピストさんもなんで静観してるんですかっ!


「まぁまぁ、今回の我々の依頼において、この国を拠点に使わせてもらえる事になりましたし。

 許可してくださったマーレ様にはお礼をしなければなりませんから」


「それに他にも有益な情報をもらえましたしね」


「マーレ様! 私も混ぜてくださいっ!!」


「ソフィーちゃん……よくわからないけど頑張れ!!」


「……ソフィーなら、できる」


 そ、そんな……確かにイヴさんのいう通り、今回の依頼を遂行するにあたってこの海底王国を拠点にしていいって許可をくれたし。

 オネットさんのいう通り、非常に有益な情報を得ることもできた。


 それも、この海底王国があるは私達の大陸と目的地……すなわち魔法神ティフィア様が治める伝説の楽園との、中間地点であり。


 この先は危険度が今までの比ではないほどに跳ね上がるって超重大な情報を。

 けど! けどだよ!? みんなして私のことを生贄にするなんて酷いっ!


「あぁ! もう本当にソフィーさんは、あのお方にそっくりですね〜」


「あ、あの方?」


「そうです!

 あっ、そうでした! 明日は私の子供達にあってくださいね!!

 ちょっとヤンチャでクラーケンに殺されちゃったりしましたけど、それはもう可愛い双子ちゃん達なんですよ〜?」


「なるほど」


 そりゃあマーレさんの子供なら可愛くて当然……ん?


「マーレさん、今クラーケンなら殺されちゃったりっていいました?」


「そうなんです!

 上の男の子の方なんですけど、もう好奇心旺盛というかなんというか。

 蘇生した後は心を鬼にして、流石に厳しく叱りましたけど……」


「蘇生……」


 マジですか。

 死者蘇生って……さすがは竜王というべきか、まさかそんなことまでできちゃうなんて。


 いやまぁ、今の姿を見たらとてもそうは思えないけど、マーレさんは竜種の頂点たる竜王の一柱だし。

 ルミエ様やガルスさんとも旧知の仲らしいし、死者蘇生ができても不思議じゃない……のかな?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る