第308話 心当たりはあるか?

 転移魔法を発動して……


「っと」


 到着! いやぁ、防衛システムも働いていて、常駐当番もしっかり決めてたのに……まさかものの数時間も経たないうちに呼び戻されるとは思ってなかった。


「むっ」


 おぉう、もう私とルミエ様以外は全員揃ってるじゃん!


「おっ、やっと来たか。

 遅かったな」


「うっ……遅れてすみません。

 準備に少々手間取ってしまって……」


 でもでも! これにはどうしようもない理由があるんですよっ!?

 だってお風呂に入って、マッサージをされて寝落ちしそうになってたんだもん!!


 それでも……クールでカッコいい最年少Sランク冒険者!

 次世代の英雄と称される〝白銀〟ソフィーとして、相応しい身嗜みを整えるのに時間がかかっちゃうのは仕方のないことだと思うっ!!


 いやまぁ確かにこの1ヶ月でSランク冒険者のみんなとは親交を深めて、仲良くなったし。

 みんなももう普通に私の正体を知ってたりするけども!

 それはそれ、これはこれといいますか……


 とにかく! 私が遅れて来て、一番最後だったのは事実だけど、私が遅れちゃったのには正当な理由があってのこと!

 だからそんなに責めないでほしいです……


「ガルス……ソフィーを責める気?」


「待て待て待て! そういうつもりは一切ない!!

 ったく、早まるんじゃねぇよ」


「そう、ならいいわ。

 けど……ソフィーを悲しませたら、いくら貴方でも容赦しないわよ?」


 ルミエ様……!


「はぁ……マジで勘弁してくれ。

 お前に暴れられちゃあ、この船が大破する……」


 確かに……かつての迷宮ダンジョン・魔法神の休息所では、事前に防げたからことなきを得たけど。

 もし仮にこの船で、ルミエ様とガルスさんが戦うことになったら……うん、考えたくもないわ。


「こほん! それで、緊急事態ってなにがあったんですか?」


 少なくとも2人が常駐当番として船に残るように当番を決めて、初日である今日の当番は〝竜狩り〟イェーガーさんと〝軍勢〟アルマさん。


 この2人が……Sランク冒険者2人がいてなお、緊急事態と判断して全員を呼び戻すほどの事態。

 いったいなにが起こってるんだろう?


「あぁ、それなんだが……まぁとりあえずこれを見てほしい。

 マス、頼む」


『外部カメラの映像を写します』


 おぉ〜、イェーガーさんとマスが仲良さそうでよかった!

 これが我が子が孤立してなくて安心する、親心ってやつなのかな?

 それで外の映像は……


「これは……」


「とまぁ見ての通り、現在この船は馬鹿でかい渦潮に進路を阻まれて、身動きが取れない状況にある」


「……」


 マジですか。

 言葉も出ないとはまさにこのことだわ。

 てか、本当になにあの巨大な渦潮!


 いくらこの船がすごくて、大きいといっても……さすがにあの渦潮に飲み込まれればひとたまりもない。

 これが大自然の力……!!


「そして、この大渦はとある者によって引き起こされたモノ」


「えっ?」


 アルマさん? じゃあ、超巨大な渦潮は自然に発生したものではなく! 誰かが意図して作ったってことっ!?


「しかも……私でもそう簡単に干渉できない程に強大な魔力で制御されています」


「っ!!」


 〝青き聖女〟と称されるイヴさんでも簡単には干渉できない大渦。


「そんなことができるのは……」


 考えられる可能性は1つ。

 特Aランク、災禍級よりさらに上。


「Sランク、天災級……もしくは、考えたくありませんけど特Sランク、神災級の存在」


 そして、それほどまでの力を持っている存在となると、いかに強大な魔物が多い海といえども限られる。

 その中でも最も可能性が高いのは……


竜種ドラゴン……ですか」


「ご明察」


 確かにいわれてみれば、この大渦の中心部に竜種の気配が……


「ん?」


 あれ、この気配どこかで……


「ソフィー? どうかしたの?」


「あぁ、いえ! なんでもありませんよ、フラン先輩」


 けど竜種か……いつかは遭遇すると思ってたけど、まさか初日に遭遇するとは。


「それでなんだが、本題はここからだ」


「本題?」


「その竜種。

 海竜がどういうわけか、俺達に攻撃するでもなく普通に姿を見せて念話で伝えて来たんだよ。

 まぁそれを直接聞いたのは俺と爺さんだけなんだが」


「あぁ、あの海竜は私達にこう伝えて来た。

『偉大なる御方に寵愛されし、白銀の少女と合わせてほしい』と」


「そこで質問なんだが。

 ソフィーちゃん、何か心当たりはあるか?」

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