第305話 ことの発端は

「人工知能……?」


 まぁ〜うん、そうだよね。

 私には前世の記憶から読み取った知識があるけど、他のみんなはそうはいかないわけだし。

 人工知能っていわれても伝わらないのは仕方ない。


「まぁ、人工的に生み出した思考能力を持った人格です」


 もっとも! 前世に記憶にある世界のように、コンピューターとかソフトウェアを使ってるわけじゃないけど。

 そもそもコンピューターなんて、この世界には存在していないし。


 マスは私のスキルによって生み出された人工知能!!

 まぁこれを説明すると長くなるから割愛するけど、つまり今日も今日とてイストワール王国で私の代わりをしてくれてるルーちゃんの弟にあたるわけだ。


「ふっふ〜ん!」


 確かにルーが生まれたのは偶然で、当時の私なら再びルーと同じような新しい人格を生み出すのは不可能だった。

 だがしかしっ!! 度重なる試行錯誤と、辛く厳しい修行の末に……


 こうして! ルーの弟にあたる新しい人化、マスを生み出すことに成功したのであるっ!!

 うんうん! 今思い返しても本当に辛く厳しい道のりだった。


 というのも! ことの発端はつい先日、今年はオルガマギア魔法学園で行われた、オルガマギア魔法学園、オルガラミナ武術学園、王立神聖レフィア学園。

 世界三大学園による交流会にて……


 初めて参加した一昨年、オルガラミナ武術学園で行われた去年ともはや恒例となった学園の妖精ことレフィーちゃんと一緒にくつろいでいたとき!

 ふと、この依頼のこと。


 そして! その依頼で使う船を効率よく運用、管理できる方法を考えていて、ルーにつぐ2人目の人格を生み出せないか試行錯誤してるけど上手くいかないと愚痴をこぼしてしまったことから始まった。


『ふふっ、ソフィーがその事を口走っちゃった時のフィルの反応は面白かったわ』


 ルミエ様……いきなり念話で悪口はよくないと思いますよ!


『ふふっ、バレなきゃいいのよ』


 まったく……でもまぁ確かにルミエ様がそういいたくなる気持ちもわかる!

 確かに依頼内容を部外者に話すのはご法度だし、私の正体が露見することにも繋がるから本来なら絶対にダメなんだけど。


 相手は私が冒険者ソフィーだってことも。

 ルスキューレ公爵家の公爵令嬢だってことも。

 そして今回の依頼のことも、当然のように知ってるレフィーちゃん!!


 レフィーちゃんから次の依頼は大変だけど頑張って、何か相談があったら聞くっていわれたときは私もびっくりしたし。

 まぁそのときフィルは飲み物を買いに行ってて、そばにいなかったからレフィーちゃんが依頼について知ってることは知らなかったんだけども。


 とにかく! 飲んでたジュースを吹き出して、盛大に咽てたもんね。

 基本的にいつも苦笑いを浮かべたりはしても、そこまでびっくりはしないフィルがめっちゃ焦っててそれはもう面白かった!!


「ふふっ」


「えっ? なに?

 なんで僕、ソフィーにそんな揶揄うような目を向けられてるの?」


 まっ! フィルのことは置いておくとして、レフィーちゃんに愚痴を漏らして。

 私に任せてっと超絶可愛いレフィーちゃんにアドバイスをもらって、なんとか成功させて生まれたのがマス!!


 マスが生まれたの交流会の最終日。

 ほんの1週間ほど前のことだし、いきなりこの船の運用とか管理を任せるのは荷が重いかな〜って思って、とりあえずアルバ様と一緒に今回の式典の準備をしてもらってたんだけど……


『それでは改めまして、私の名前はマス。

 ソフィー様によって生み出された、この船のシステムや運航を管理している者です。

 以後、お見知り置きください』


「あはは……」


まさか生まれて1週間足らずのマスとアルバ様が共謀して、こんなサプライズをされちゃうとは。


『では初めに当艦の主な設備や性能についてご説明させていただきます』

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