第303話 船長
ここは船内に存在する会議室。
部屋の広さは空間魔法によって調整することが可能で、最大で約100名程なら入ることができる。
まぁ机とか椅子はさすがに魔法でサイズや数は変えられないから、部屋のサイズを変える度に入れ替える必要があるんだけど……
現在この会議室にあるのは中央が空洞になっている円卓であり、席は全部で15個。
この船に乗っているSランク冒険者の数に合わせて、セッティングされていて、その座り心地はもちろん抜群!!
けど! 今重要なのはそこじゃない、この場において最も重要かつ凄いのは私達の前に鎮座しているこの円卓っ!!
空洞になっている円卓の中央では船外、船内にある無数のカメラから送られてくる映像を、立体映像として映し出すことができ!
さらにはこの円卓はタッチパネルのように操作することができるのであるっ!!
「ふふふ」
いやぁ〜! 適当に思いついたことをいってただけなのに、まさかそれを実現しちゃうなんてさすがはアクムス王国の技術力と私の魔法技術と知識っ!!
あとでみんなに色々と説明して驚かせてやろう!!
「じゃあ……我らが船長殿、音頭を頼むぜ?」
「うぅ……」
せっかく現実逃避してたのに……ガルスさんの言葉と、みんなの視線で現実に引き戻されてしまった。
どうして、本当にどうしてこんなことになってしまったのだろう?
アクムス王国王都フェニルの港を出発して1時間程、航海自体は特に問題もなく順調に進んでいるといっていい。
ただ1つにして、最大の問題は……ガルスさん達のおふざけによってなぜか、私が出航の合図をしたって理由だけで船長に担ぎ上げられそうになっていることっ!!
「なんで私が……」
普通こういうのって年長者が! つまりはこの中で一番の古株であるガルスさんがやるもんじゃないの!?
なんで新入りで、なおかつ最年少である私が船長なんて面倒く……こほん! 責任重大な役割を任されるのよ!!
「なんでって、そりゃあ嬢ちゃんが一番この船について詳しいからな」
「そうそう! なにせこの船の設計者や1人でもあるわけだし」
「うぐっ……」
ガルスさんだけじゃなくて、ロイさんまで!
けど、それをいわれると……い、いや! 確かに出航してすぐに、この船の凄さをみんなに自慢しだけども!!
確かに私は設計者の1人だけども!
ちょっとだけ建造に関わっただけで、基本的にはアイデアを出して協力しただけなんですけど!?
そう! 断じて私が調子に乗って色々と手を出したり、アイデアを出したりしたからこんなオーパーツな代物が完成してしまったわけじゃない!!
「それに! ソフィーさんは、我々の中で最も人気のある人物、ですからね」
「うんうん! ミルの言う通りだし、私もソフィーちゃんが船長がいいと思うよ!!」
「私も私も!」
ミルバットさんに、フラン先輩、オラシオさんまで!
いやまぁ確かにそれも自慢したけども……
「うぅ……」
「まったく……みなさん、それ以上ソファーさんを困らせないであげてください」
イ、イヴさん〜っ!!
「じゃあイヴは誰が船長に相応しいと思う?」
「そ、それは……一番この船を熟知していますし、ソフィーさんが適任だとは思いますが」
「っ!?」
イ、イヴさん!?
くっ、こうなったら誰が他に助けをっ……
「ソフィーが船長か……まぁ、それが当然だよな」
「ふふっ、船長として頑張るソフィーも可愛いでしょうね」
「あっ、みなさんお茶のお代わりは?」
「おっ、ありがとう」
「はっはっは! フィルくんは気が利くな」
「まぁソフィーと一緒に行動してますからね」
「あぁ、フィルくんの気持ち、私もわかるわ」
「あはは……オネットさんも大変そうですからね。
エレンさんとルミエ様は……いいとして、イェーガーさんとアルマさんは温かいの、オネットさんは冷たいの、シャドウさんはブラックコーヒー、ラピストさんはアイスココアでいいですか?」
「あぁ、頼むよ」
「……フィルは、いいやつ」
えっ? なにあの和やかな空間……私もそっちに入れて欲しいんですけどっ!?
「まぁソフィーさん、そう難しく考えずにとりあえず船長を引き受けてくれませんか?
大丈夫です、何かあれば年長者のガルス様が全ての責任を取ってくれますから」
「イヴさん……」
「ちょっ! お前なぁ、何を勝手に……」
まぁイヴさんにもここまでいわれちゃったし、全部の責任をガルスさんが守ってくれるならいいかな?
「はぁ……わかりました。
そういうことなら」
「ふふっ、ありがとう」
「ったく、お前らなぁ……」
ガルスさんがため息をついてるけど、細かいことは気にしな……
ビーッ! ビーっ! 緊急警報!! 緊急警報!!
強大な魔力を感知しました、緊急事態に備えてください!!
繰り返します! 強大な魔力を感知しました、緊急事態に備えてください!!
「……」
本当、どうしてこんなことに……
「はぁ、とりあえず全員席に着いてください」
前途多難だわ。
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