第301話 出航式典
人々の歓声を受けて姿を現したのは……
────!!
美しく、カッコいい流線形の車体!
ズシンと鳩尾に響くようなエンジン音!
前世の記憶にあるスポーツカーやスパーカーを彷彿とさせる、真っ赤なオープンカー!!
「おぉ〜」
そして、そのオープンカーに乗って!
白を基調とした軍服を身に纏い、ハンドルを片手に集まった人々に手を振ってる1人の女性っ!
この国! 四大国が一角に名を連ねる、アクムス王国を統べる真紅の神に金色の瞳をした赤き女王!!
現アクムス王国国王アルバ・ジョン・アクムス陛下っ!!
「ふふっ、やっぱりアルバ様は派手好きだわ」
まさか、こんな登場をするとは。
護衛とかの問題もあるだろうに、2シーターの2人乗りのクーペに1人で乗って運転してるし。
まぁあの魔道車に乗ってるんなら、護衛の問題はないんだけども!
セバスさんと、それに若き宰相にして代々宰相を務めてるっていうグランツェ公爵の当主が頭を抱えてる姿が目に浮かぶ。
2人にはアルバ様のゲーム仲間にして遊び仲間である私が遊びに行ったときに、アルバ様とゲームしたり悪巧みしたりして迷惑をかけちゃってる自覚はあるし……
今度遊びに行ったときに、なにか差し入れでも持っていくとしよう。
「ソフィー、あの魔道車って例の?」
「うん!」
いかにもっ!!
いまアルバ様が乗ってる魔導車は……前世の記憶を持つ私と、アクムス王国の女王であるアルバ様の共同で設計して作り上げた傑作!!
「見た目のカッコよさはもちろん、その性能も他の魔導車とは比較にならない特別車っ!!」
もし仮にあの車に攻撃を仕掛けようものなら、物理攻撃にせよ魔法攻撃にせよ瞬時に展開された結界で弾かれる。
その結界の強度は、戦場において戦況を一変させる威力を誇る広域殲滅魔法すら耐え切るほどっ!!
さらにさらに! 最高速度はなんと約500キロ!!
それでいてエンジンを始動中は、車内には保護魔法が常時展開されているから乗車している人に負担は一切ない。
仮に最高速後で壁に突っ込んでも、中の人は無傷ですむ!
「ふっふっふ〜、しかも! あの魔道車は現状世界で2台しかない超激レアな魔導車!!」
そして! そのうちの一台は……当然! 開発者の1人でもあるこの私が持っているっ!!
まぁ、乗れる機会はあんまりないんだけども。
というのも、魔導車は無茶苦茶高い上に、輸出されているのは他の四大国と数カ国のみ。
持ってる人なんて大国の王族とか大貴族とかくらいで、イストワール王国で持ってる人なんて皆無!
そんな魔導車を乗り回そうものなら、私の正体が速攻でバレちゃうもん。
とはいえ! 私は他にもカッコいい魔導車を数多くコレクションしている!!
「ふっふ〜ん!」
今度私のコレクションをSランク冒険者のみんなにも見せてあげよう。
むふふ! 羨ましそうにするみんなの顔が楽しみだわ!!
「っと、今はこんなことを話してる場合じゃなかった」
今日! 私達が……世界に15人しかいないSランク冒険者が全員、この場所に集結しているのは!
こんなにも大勢の人が集まって、お祭り騒ぎになっているの……私達の出航式典が行われるからに他ならないっ!!
「では、これより……」
特設ステージの壇上に上がったアルバ様が、集まっている大勢の人達を見渡し……
「史上初めて全てのSランク冒険者が共同で遂行する、特級任務の出航式典を開催するっ!!」
そう宣言した瞬間──アルバ様の立っている特設ステージの背後にある席に座っていた私達の後ろで、盛大に花火が打ち上がった。
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