第296話 自己紹介 その1

 自己、紹介……ガルドさんの言葉を受けて、静まり返った会議室内に微妙な空気が舞い降りる。

 けどまぁ、だってねぇ……?


「自己紹介って……統括グランドマスター、俺達はガキじゃねぇんだぞ?」


 ロイさんっ!!


「確かに実際に会うのは初めての奴らもいるが、各々の噂くらいは聞き及んでいるだろう。

 それに俺達Sランクは単独行動が多い、互いに馴れ合ったり、親交を深める必要はない。

 改めて自己紹介なんて、時間の無駄だと思うが?」


 うんうん! ロイさん、よくぞこの場にいるみんなの意見を代弁してくれた!!

 だって世界に15人しかない冒険者達の頂点、Sランク冒険者が仲良く自己紹介って……ねぇ?


「まぁお前の言いたい事もわかるし、本来個人で国家戦力に匹敵するSランク冒険者が慣れあって親交を深める必要がないのも事実だ。

 だが……今回ばかりは、そんなお前らにも少しは仲良くしてもらう必要があるんだよ」


「えっ?」


 Sランク冒険者が仲良くしないとダメな要件って……そんなの特Sランク、神災級の存在が暴れてることくらいしか思いつかないけど。

 まさか、そんな緊急事態が起こってたのっ!?


「統括、それは私を……いや、私達をこの場所に集めたあの者が関連しているのかな?」


「「「「「「「っ!!」」」」」」」


 へっ? なになに、どういうことっ!?


「まぁ、そう言う事だ。

 俺も早く本題に入りたいし、軽くでいいから自己紹介をしてくれ」


「まっ、我らが統括様がこう言ってるんだ、ここは素直に従ってやるとしようぜ。

 俺の事は……まぁ全員面識があるし、知ってるだろうが、〝冒険王〟ガルスだ」


 まぁ……ガルスさんはマリア先生と同じく、400年前の聖魔大戦でその名を馳せた大英雄。

 長きに渡ってSランク冒険者の地位に座してる、最古のSランク冒険者だもんね。


「じゃあ次は俺だな。

 俺は〝剣帝〟エレン・ルスキューレだ、よろしく」


 えっ、ちょっと待って!

 確かにガルドさんの左隣に座ってるエレンお兄様が、ガルドさんの次に自己紹介するのはわかる。


 けどそうと……次はエレンお兄様の左隣にいる私の番ってことじゃんっ!!

 やばい、ちょっと緊張して来た!!

 と、とりあえず席から立って……


「こほん! では、次は私が……!」


 お、落ち着け私!

 憧れのSランク冒険者達が勢揃いしてるとはいえ、私も今やそのSランク冒険者の一員なわけだし!

 私は孤高の悪役令嬢たるソフィア・ルスキューレ! こんな場所で臆する私ではないのだっ!!


「お初にお目にかかります。

 私は〝白銀〟ソフィー、新参者ですがよろしくお願いします」


 ふっ! どうよっ!!

 この優雅かつ優美で、完璧な所作での一例! 我ながら素晴らしい挨拶だったと思う!!


「いやさっき統括も言ってたが、嬢ちゃんの2つ名は白銀の天……」


「なにか?」



 ピキ、ピキッ……!!



 会議室内の気温が急激に低下して、霜が降りた部屋の一部が凍り付く。

 いらないことを口走りそうになったロイさんに向けて、昨日習得したばかりの覇気を放って黙らせてやったわけだけど……


 私の覇気の色は薄い青!!

 そんでもって周囲を凍り付かせる氷の影響を及ぼすと……いいじゃん! いいじゃん!!

 我ながらめっちゃかっこいいっ!!


「ほう、これはこれは」


「へぇ……」


「やるぅ〜!」


 ふっふっふ〜! 私の覇気はSランク冒険者達をも唸らせる!!


「い、いや、なにも」


 よし、ロイさんも黙らせれたし。

 やっぱり昨日、ミルバレッドさんの覇気をユニークスキル・探究者で見て獲得しておいて正解だったわ!!


「あはは、じゃあ次は僕の番ですね。

 〝光天〟フィルです、僕も新入りですがよろしくお願いします」


「〝白帝〟ルミエよ」


 おおう、ルミエ様の自己紹介が超簡素!!


「次は私ですね。

 顔見知りの方も、初対面の方も〝千剣〟ミルバレッドです、どうぞよろしくお願いします」


 ミルバレッドさんの次はロイさんで、その次が……


「俺は……」


「私は〝破炎〟フラン!

 みんなよろしくね〜!!」


「は?」


 フラン先輩っ!?

 ガルスさんの右隣に座ってるガルドさんとクリスティアのさらに右隣なのになんで今っ!!

 ロイさんが腰を浮かせた状態で固まっちゃってるじゃん!!


「ふふっ、私は〝七色の魔女〟オネットです。

 皆さん、よろしくお願いします」


 フランさんの右隣に座ってるオネットさんまで……


「ロイさん、うちのフランがすみません。

 続きをどうぞ」


 うわぁ、なんかロイさんが哀れだわ。


「〝流雲〟ロイだ。

 よろしく……」


 ま、まぁ! 何はともあれ、これで顔見知りのメンバーの自己紹介終わった。

 次は……


「次は私の番のようですね」


 転移門で登場した、綺麗な水色の髪と瞳をした美女!!

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