第295話 集結

「おいおい、マジかよ……」


「これは……」


「うそっ!」


「まさか……」


 入り口付近に出現した真っ白な扉。

 転移門を見てロイさん、ミルバレッドさん、フラン先輩、オネットさんが目を見開いて愕然と呟く。


 まぁ、それも仕方がない。

 なにせ、私達の前に現れた転移門の数は……全部で6つ。

 現在現役のSランク冒険者は、私達を含めて全世界で総勢15名。


 そしてこの部屋には既に、私を含めて9人のSランク冒険者が揃っていたから……これで、今回の招集には全てのSランク冒険者が応じたということになるっ!!


「ねぇ、フィル」


「なに?」


「これまで、ギルドの招集に全てのSランク冒険者が応じたことってあったっけ?」


「いや、一度もないね」


「だよね……」


 世界でも10数名……正確には15人しかいないSランク冒険者が勢揃いするなんて、今回の招集っていったい何事なのっ!?

 真っ白な扉が徐々に開いて行き……


「あら、もうこんなにもお揃いだったのですね」


 まず最初に開け放たれた扉から姿を現したのは、綺麗な水色の髪と瞳をした美女。


「皆さん、お久しぶりですね!」


 続いて、清廉な雰囲気を纏いながらも朗らかな笑みを浮かべる、桃色の髪に金と赤のオッドアイの美少女。


「おっ、大半の奴らは来ると思ってたが……まさかアンタらまで来るとはな〜」


 ラフな服装ながらもがっちりとした体型なのが見て取れる、茶髪の髪と瞳をした美丈夫。


「まぁな」


 漆黒の衣服に身を包み、音もなく悠然と歩く黒い髪に赤い瞳。

 どこか冷淡な印象を与える美青年が肩をすくめる。


「はっはっは、まぁ今回は仕方あるまい」


 そんな青年に対して不敵に笑う、肩口ほどまでの白髪に顎髭。

 そして老齢でありながら衰えない黒い瞳の鋭い眼光の人物。


「……」


 エメラルドグリーンの髪に若葉のような綺麗な緑の瞳、整った容姿ながら無表情の少女が無言で席に腰掛ける。


「ふむ……」


 なにこれ! すごいっ!!

 今この場に、全世界で15人しかいないSランク冒険者が勢揃いしちゃってるんですけどっ!?


「ねぇねぇ! フィル、どうしよう?

 サインとか貰っておいた方がいいかなっ!?」


 各々近くの席の人と話してるけど、挨拶とかしに行った方がいいのかなっ!?


「Sランク冒険者……というか、英雄と呼ばれる人達のファンとして、この状況に興奮してるのはわかるけどちょっと落ち着いて」


「でもでも!」


「サインを貰うのは、用事が済んでからなしようね」


 用事って……?



 パァンッ!!



「っ!!」


 び、びっくりしたぁ……


「さて……まずは礼を言おう、よく集まってくれた」


 そ、そうだった!

 今はギルドからの招集を受けてこの場に集まってるんだった。

 サインを貰うにしても、まずはこっちが優先だもんね!


 しかし……さすがは冒険者ギルドの統括グランドマスターたるガルドさん!

 柏手一回で各々好きに話してたSランク冒険者達を黙らせちゃうとは……


「全員揃った事だし、早速本題にと言いたいところだが……まさかお前らが全員揃うところを見られるとはなぁ」


 それはそう本当にっ!! この部屋の中央に設置されていた円卓の席は全部で17席。

 そのうちの2席は冒険者ギルド統括グランドマスターであるガルドさんと、副統括サブマスターのクリスティアさんの席として……


 残り15個の席全てにSランク冒険者が座ってるとか!!

 やばい! 全てのSランク冒険者が勢揃いしてる光景とか、めっちゃ壮観すぎるっ!!


「〝冒険王〟ガルス。

 〝剣帝〟エレン。

 〝千剣〟ミルバレッド。

 〝破炎〟フラン。

 〝七食の魔女〟オネット。

 〝流雲〟ロイ。

 〝青き聖女〟イヴ。

 〝巫女姫〟オラシオ。

 〝竜狩り〟イェーガー。

 〝影の支配者〟シャドウ。

 〝軍勢〟アルマ。

 〝疾風〟ラピスト。

 〝白銀の天使〟ソフィー。

 〝光天〟フィル。

 〝白帝〟ルミエ」


 むっ、ガルドさんまで非公認そっちの方の2つ名を……


「こうしてSランク冒険者、15名全員が集結してるわけだが……お前ら全員が顔を揃えるのは初めてで、初見の奴らもいるだろう。

 って事で、まずは自己紹介から始めようか」

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