第294話 時間だ

 このちょっとガラが悪そうな人は……!


「この人は……」


「ん? そういえば、知らない顔が何人かいるな……てことは、お前らが新入りのトリニティのヤツらか!

 おいおい! マジでこんなちびっ子共だったのかよ!!」


「むっ」


 失礼な! ちびっ子とはなんですか! ちびっ子とは!!


「まぁ、そっちの姉ちゃんは……」


「ふふ、殺されたいのかしら?」


「っ……!!」


 ルミエ様の僅かな殺気に反応して身構えるとは……やっぱりSランク冒険者、侮れない!!


「ったく、煩いぞロイ。

 入ってくるなり早々、騒いでんじゃねぇよ」


「旦那……」


「あと、変にちょっかいをかけるのだけはやめておけ。

 そいつにボコボコにされても、仮に殺されそうになっても、俺は助けてやらねぇからな」


「ひでぇ言い草。

 しかし、旦那にそこまで言わせるとは……姉ちゃん、お前何者だ?

 軽く睨まれただけで全身に鳥肌が立って、悪寒が走ったぞ?」


「「「っ!!」」」


 フラン先輩とオネットさん、そしてミルバレッドさんが、部屋に入ってきた人物の言葉に目を見開いて息を呑んでるけど……まぁ驚くのも無理はない。


 私もこの人の武勇伝はいっぱい知ってるし!

 フラン先輩達は初対面の私なんかよりも、同じSランク冒険者としてこの人の。

 ロイさんの実力を知ってるだろうからね。


「貴方は〝流雲〟ロイさんですね?」


「あぁ、そういえば自己紹介をしてなかったな。

 いかにも! 俺の名前はロイ、嬢ちゃんの言う通り〝流雲〟と呼ばれるSランク冒険者だ」


「初めまして!

 私はトリニティのリーダーを務めている〝白銀〟ソフィーです!!

 こっちはパーティーメンバーのルミエ様と」


「〝光天〟フィルです。

 以後、お見知り置きを」


「と、いうわけです!

 よろしくお願いしますっ!!」


「おう、よろしくな。

 けど嬢ちゃんの2つ名って白銀の天……」


「白銀です!

 そっちは認めてませんから、公式は白銀です!!」


「お、おう、そうか。

 なんかイメージしてたのとだいぶ違うが……お前さん達の噂は聞いてるぜ」


「噂、ですか?」


「なんでも前代未聞の大事件、史上初めてとなる七大迷宮の一角〝大海〟のスタンピードを実害ゼロで抑え込んだとか」


 あぁ、噂ってそれね。

 てっきりエレンお兄様との関係かと思って、ちょっとだけドキっとしちゃった。


「特に嬢ちゃんは、Sランク冒険者になる前に魔王の一角だった、あのナルダバートを崩したんだろ?」


「ふふ〜ん! その通りです!!」


「どうだ? あとで俺と手合わせしてみねぇか?」


「手合わせですか……ふむ」


 まぁ、お兄様やガルスさん以外のSランク冒険者の実力を知ることができるいい機会かも。


「別に構いませんよ」


「おっし、決まりだな!」


「手合わせって……何勝手に決めてるんだ、お前ら……」


「あっ、ガルドさん!」


「ふふっ、ソフィーさん、こんにちは」


「クリスティアさんも! お久しぶりです!!」


「よぉ統括グランドマスター、そういう事だからよろしく頼むぜ?」


「何がよろしくだ、そんなの許可できるわけねぇだろうが。

 周囲にどれだけの被害が出ると思ってやがる……」


 むっ、確かにいわれてみれば……手合わせとはいえ、Sランク冒険者同士の戦いなんて危険極まりない。

 ガルドさんのいってることは、超真っ当な正論だし……まぁ、仕方ないか。


「それよりも、そろそろ時間だ。

 ロイ、お前も席に着け」


「へいへい」


 もう招集時間の午後3時。

 ということは、今回の招集に応じたのはこの場にいる9人だけってことかな?


「さてさて、今回は何人が集まるか」


「えっ?」


 何人って……ロイさんは何をいってるんだろ?


「この場にいる9人だけじゃないんですか?」


「あぁ、嬢ちゃん達は初めてだもんな。

 実は俺達Sランク冒険者の冒険者カードは、他のランクのカードと違って少し特殊なんだよ」


「特殊?」


「そう、そこの不良の言う通り、Sランク冒険者の冒険者カードには特別な機能があるんだ」


 エレンお兄様、不良って……


「おいこら、〝剣帝〟お前な……」


 ほら、呆れてロイさんも苦笑いしちゃってるじゃん!


「Sランク冒険者の冒険者カードには、座標をこの部屋に固定した転移魔法が込められている」


「無視かよっ!?」


 ロイさん……けど、転移魔法?


「まぁ転移魔法と言っても特殊なもので、ギルドからの招集があった場合に限って指定の時間だけ、Sランク冒険者当人の任意でギルドの結界とかを無視してこの部屋に転移できるものだ」


「へぇ〜」


「そ! だから、今この場にいる連中以外に招集に応じるヤツがいれば、時間ちょうどにこの部屋への転移門が開くってわけなんだが……時間だ」


 ロイさんがそういった瞬間……


「これが……」


 この部屋の入り口付近に、真っ白な扉が現れた。

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