第297話 自己紹介 その2

 彼女のことは当然知ってる!

 彼女というか、この場にいる全員のことはかなり詳しく知ってると自負している!!


 なにせ……エレンお兄様がSランク冒険者だったこともあって、私にとってSランク冒険者とはマリア先生とか伝説に語られる英雄とは違った、身近な憧れの存在!!


 小さい頃からお兄様達から、Sランク冒険者達の冒険譚の話を何度も聞いたし。

 自己紹介なんてなくても、彼らのことがわからないはずがないっ!!


「イヴです。

 世間では〝青き聖女〟と呼ばれています」


 この美しい海の綺麗な色を持つ、スタイル抜群の美女。

 彼女こそが水を自由自在に操り、Sランク冒険者の中でも水上戦なら最強と噂される存在!

 〝青き聖女〟イヴさんっ!!


「こんにちは!

 私はオラシオ、〝巫女姫〟っね呼ばれてます!」


 守りに長けていて、さまざまな結界魔法を使いこなし、守りに守りに関してはSランク冒険者随一の実力者!

 神聖で清廉な雰囲気を纏っているけど、人懐っこい朗らかな印象を抱かせる桃色の髪に金と赤のオッドアイの美少女。

 〝巫女姫〟オラオシさん!


「じゃあ、次は俺だな!

 俺は〝竜狩り〟イェーガー、歳は今年で32歳、趣味は……」


「料理ですよね?」


「おっ、その通りだ」


 この見た目に反して料理が趣味! このギャップがまたいい!!

 しかも愛妻家で、現在6歳の娘さんと3歳の息子さんを溺愛中!


 茶髪の髪と瞳のがっちりとした体型の明るい美丈夫で、元パーティーメンバーで現在の妻を守るために。

 そして大勢の人を守るために、街に襲撃してきた火竜を単独で討伐した英雄、〝竜狩り〟イェーガーさん!!


「しかし、お嬢さんとは初対面のハズだが……よく俺の趣味を知ってたな」


「はっ!」


 わ、私としたことが、ついついイェーガーさんの自己紹介に口を挟んでしまった!!

 ど、どうしよう! なんて答えるのが正解なのっ!?


 正直に小さい頃からSランク冒険者に憧れていて、みなさんに関する情報は冒険譚から冒険者名鑑に載ってる情報まで網羅してるっていっちゃうべき?


 いやいやいや、そんなことを口走っちゃって引かれたらショックが大きすぎる。

 それに! 冷静沈着かつクールでカッコいい仮面の冒険者っていう私のイメージが崩れかねない!!


「そ、それは……」


「まっ、そんな事よりもだ。

 イェーガーの次はシャドウの番だろ? シャドウ、自己紹介を頼む」


 ガ、ガルドさんっ!!

 さすがは我らが統括グランドマスター! ナイスタイミングだわっ!!


「自己紹介って、あんたがもう言ってるだろう。

 はぁ……俺はシャドウ、〝影の支配者〟と呼ばれている」


 〝影の支配者〟シャドウ。

 現在、世界最高と呼ばれている暗殺者! その異名の通り影に潜み、影を操り、敵を屠る。

 姿を表していても普通に強いけど、一度その姿をくらませれば捕捉するのは困難な影の狩人!!


「はっはっは、相変わらずシャドウくんは愛想がない」


「黙れ、クソジジイが」


「まぁジジイなのは否定しないがね。

 もうそろそろ引退を考えているのだが……アルマだ、〝軍勢〟の二つ名で呼ばれている。

 よろしく頼むよ」


 この初老の人物が召喚魔法によって召喚した無数の存在を、瞬時に築いた軍勢を率いて戦場を蹂躙するという〝軍勢〟のアルマさん!

 そして最後は……


「……〝疾風〟ラピスト」


 無口かつ無表情で知られる、エメラルドグリーンの髪に若葉のような綺麗な緑の瞳の綺麗な少女!

 目にも止まらない圧倒的なスピードで戦場を縦横無尽に疾駆するする姿から、〝疾風〟と呼ばれるラピストさん!!


 ラピストさんはエルフと人間の間に生まれたハーフエルフで、少女のような見た目とは違って既に成人済み。

 ちなみに冒険者名鑑によると、その年齢は不明らしいんだけど……


「っ〜」


 何はともあれっ! 今この場にっ!!

 〝冒険王〟ガルス。

 〝剣帝〟エレン。

 〝千剣〟ミルバレッド。

 〝破炎〟フラン。

 〝七食の魔女〟オネット。

 〝流雲〟ロイ。

 〝青き聖女〟イヴ。

 〝巫女姫〟オラシオ。

 〝竜狩り〟イェーガー。

 〝影の支配者〟シャドウ。

 〝軍勢〟アルマ。

 〝疾風〟ラピスト。

 〝光天〟フィル。

 〝白帝〟ルミエ。

 そして私! 〝白銀〟ソフィー。


 この部屋にっ! 全てのSランク冒険者が一同に会しているっ!!

 この事実だけでもう興奮が止まらないのに、私自身がその一員って……!!


「はい、ありがとう。

 そして最後に……」


 最後?

 Sランク冒険者はラピストさんで最後だけど……


「「「「「「「っ!!」」」」」」」


 私を含めて数名が息を呑んだ目を見開く。


「既に会ったる奴らも何人かいるだろうが」


「改めてご挨拶させていただきます。

 私がご主人様の命によって、皆様をこの場に集めさせていただきました、アイシャと申します。

 以後、お見知り置きを」


 ガルドさんとクリスティアさんの間に突如として現れた人物が。

 メイド服に身を包んだ雪のように透き通った白い肌と純白の髪、金色に輝くような瞳をした絶世の美女が完璧な所作で一礼した。

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