第290話 覇気
「なるほど……」
まぁミルバレッドさんはエレンお兄様とタメを張るほどの実力者だし、冒険者達の最高位であるSランク冒険者にまで上り詰めた人物。
覇気が使えても不思議じゃない。
「あの……お姉様、覇気って……?」
ミネルバは有能な執事と化しているとはいえ、第二王子であるウェルバーの婚約者だし。
ルスキューレ公爵家の養女となってからは……それはもう本当に可愛い!
『私もソフィアお姉様のようになりたいんですっ!!』っていって、勉強も頑張ってるし。
ツンデレなのに、私に対してはデレが大半を占める所とかもう本当に可愛らしい!!
って、そうじゃなくて、とにかく! それはもう頑張って勉強したり、魔法の練習をしたりしてる。
その甲斐もあって、ミネルバの知識量はかなりなものだけど、それでも覇気のことを知らないのも無理はない。
無理はないんだけども……覇気を知らないことをちょっと恥ずかしそうに、モジモジしながら聞いてくる!
あぁ〜! もうっ、私の妹は、ミネルバはなんて可愛いの!?
「お姉様?」
「はっ!」
わ、私としたことが、もうちょっとで公衆の面前でミネルバのことを抱きしめて撫で撫でしちゃうところだった。
「こほん! 覇気は敵を威圧するエクストラスキル・威圧の上位互換に当たる力で、一握りの強者のみが身につけることができる固有スキルのこと」
エクストラスキルの威圧が相手に魔力をぶつけて威圧するだけなのに対して、覇気は確固たる意思に魔力を乗せて相手を威圧する。
つまり! こめる意志の強さによって、その威力は大きく変わる。
実力差があれば気絶させることはもちろん、その気になれば死に至らしめることすらできるし。
その上! 周囲で野次馬をしてた冒険者達が騒いでるように、並の者なら覇気使われたことを認知することすらできない。
ルミエ様や大賢者たるマリア先生に冒険王であるガルスさん。
七魔公であるレヴィア様にベル様、八魔王……今は七柱だけど、魔王の一角である鮮血姫ルーナ様。
あとは……敵ならかつての八魔王の一角であり、光の使徒の最高幹部である十使徒の第十使徒でもあったナルダバートとか、第七使徒のピアも覇気を使ってた。
ちなみに! ナルダバートも使ってたけど、ルミエ様いわく魔王の地位にいる者が使う覇気は、魔王覇気という固有スキルになるらしい。
「いかにも。
覇気とは簡単に言うと、敵意や殺意と言った意思や、絶対に倒すと言った覚悟に方向性を持たせ。
その意思や覚悟に魔力を乗せて相手にぶつける事で、敵を威圧する力」
さらに詳しくいうと、精神生命体などの一部を省いて、この世界の生物は全て大きく分けて物質体、魔力体、意識体の3つを有する。
物質体はそのまんま肉体のことを指し、魔力体は体内を流れる魔力回路、意識体は精神を意味する。
覇気で威圧された敵が意識を刈り取られるメカニズムは至って簡単!
強い意思をぶつけられたことで精神が乱れ、それと同時に一瞬にして強烈だ魔力の波が魔力回路をかき乱す。
そうすること相手の感覚を麻痺させて、疑似的な魔力酔いみたいな状態を引き起こすことができる。
すると、ただでさえ乱れていた精神が更なるパニック状態に陥り……結果として意識を刈り取るに至る。
さらに激しく魔力回路を掻き乱すだろか焼き焦がして、肉体にまでダメージを与えれば死に至らしめることができるわけだけど……
「ふむ」
ぶっちゃけ、覇気のコントロールは結構大変らしいし。
膨大な魔力をぶつけることで覇気と同じことができちゃうから、今まで覇気を習得してこなかった。
けど! わずかな魔力で、有象無象の意識を刈り取って無力化することができるなら習得するべきなのでは!?
普通に魔力をぶつけて気絶させるより、圧倒的にコスパがいいし!!
「まぁ言葉だけじゃあ、わかり辛いよね」
あっ、考えごとをしててミルバレッドさんに勘違いされちゃった。
「そうですね、例えば……」
────ッ!!
ミルバレッドさんが軽く覇気を放ち……上空から落下してきた、気絶した真っ白な鳩を優しく受け止める。
「このように、任意の対象の意識を刈り取ることができる力。
それが覇気と呼ばれる固有スキルの力です」
おぉ〜、さすが! お手本のような覇気だったわ!!
「っと、かなり目立ってしまいましたね。
それでは可愛らしいお嬢さん方、私はこの辺で失礼させていただきます」
バザバサバサッ!
ミルバレッドさんの腕の中で気絶していた白い鳩が飛び立ち……
「では、また明日お会いしましょう」
ミルバレッドさんの姿が掻き消える。
「ふふっ」
やっぱり、そこまで気づかれてたか。
まぁ……いいや! 目的はちゃんと果たせたし!!
『ぴろん!
固有スキル・覇気を獲得しました!』
「さぁ! ミネルバ、旅行を楽しもう!!」
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