第288話 貴方は……
めっちゃ偉そうにドヤ顔で意味不明なことをいってるけど……なにこの生意気そうなお子様。
それなりに仕立てのいい服を着てるし、後ろにお付きの執事っぽい人がいるからどっかの貴族のボンボンってところかな?
「えっと……」
この場合、どう答えるのが正解なんだろう?
まずミネルバ達との旅行を満喫したいから、この生意気お子様について行くっていうのは論外!
一応エレンお兄様の招集に便乗して、お忍びで遊びにきてるって設定だし、目立つような真似はあまりしたくない。
それにこれでも私って一応、白銀と謳われるSランク冒険者で次世代の英雄と称される有名人なのだ!!
ここは冒険者達の都市アバン! ここで変に騒ぎを起こせば、私やフィルやルミエ様の容姿から身バレしちゃう恐れもなくはない。
となれば! ここは穏便に断って、立ち去るべき!!
「すみませんが、連れがいますので」
ふっ、我ながら完璧な断り文句だわ!
これだと連れがいるからご一緒できないんです……って感じの申し訳なさも演出できる上に、相手も無理に誘いづらい!!
それにこのアバンは完全に国家から独立した、冒険者ギルドが統治する都市。
いわば都市国家みたいなものだけど、当然このアバンに貴族階級なんてものは存在しない。
つまり! このアバンにいる貴族は、私達や目の前の生意気お子様を含めて全て他国の人間っ!!
向こうもこのアバンで騒ぎを起こしたくはないだろうし、これで穏便にこの話を終わらせられ……
「な、なんだとっ!?」
「えっ?」
「お、お前っ! ふざけるなよっ!!
この僕の誘いを断るというのかっ!?」
「ちょっ、え?」
とりあえずそれ以上騒ぐのは! 元々周囲の注目を集めてたのに、余計に人目を集めちゃってるじゃんか!
ちょっとお付きの人! この生意気お子様をどうにかしてっ!!
「えぇえぇ! 誠にその通りです!!
その服装などを見たところ、貴女は貴族ではありませんね?
そこそこ裕福な商人の娘といったところでしょう」
そりゃまぁ、今はお忍び旅行って設定だからお忍びにふさわしい服装をしてるけども。
「平民の分際で、お坊ちゃまのお誘いを断るなど言語道断!!
この方を誰方と心得ておいでかっ!」
いや、知らないけど……
「このお方はキルビア王国がベルゼ伯爵がご子息、ベンゼル様でありますぞ!!
坊ちゃまにお声掛けいただけた栄誉も理解せずに断ろうとするなど、無礼も甚だしいっ!!」
「キルビア王国のベルゼ伯爵……」
キルビア王国といえば、イストワール王国の同盟国の1つだけど……ふむ、ベルゼ伯爵って名前は聞いたことがない。
つまり、ベルゼ伯爵はキルビア王国において、そんなに重要なポストにいるわけじゃないってことだけど……
「お姉様、これって……」
「えぇ、私もちょっと驚きを隠せないわ」
今ここで重要なのはそんなことじゃない!
まさかここで、このアバンの往来で! こんな騒ぎを引き起こすなんてっ!!
しかも貴族の地位を笠に着たこの横暴な態度!!
自由を信条とする冒険者の街で、貴族の地位を笠に着て横暴に振る舞うなんて! 一番冒険者達の反感を買いかねない言動なのにっ!!
まさかキルビア王国のベルゼ伯爵令息とやらが、ここまで考えなしだとは……
ここで騒ぎを起こして冒険者達の反感を買えば、本当に最悪の場合はキルビア王国から冒険者ギルドが撤退なんて事態もあり得なくはないのに。
まぁ、流石にそれはSランク冒険者の怒りを買ったりしない限りはないだろうけど……
「あっ」
私ってSランク冒険者の1人だったわ。
「ふん! わかったらさっさと謝罪しろ。
そうすれば先程のお前の無礼を特別に許してやる」
おおう、マジで運がいいわこのベンゼルくんは。
もしこれが私以外のSランク冒険者だったら、どうなっていたことやら……しかしどうしよう。
ベンゼルくんが騒いでくれたおかげで、周囲は人だかりになっちゃってるし。
フィル達を呼んでもいいけど……さらに話がややこしくなる未来しか見えない。
それに、もし仮にこの場所で私達の本当の身分を明かそうものなら大騒ぎになるのは確実!
国際問題に発展するのは間違いない。
だって仮にも公爵令嬢にして第一王子の婚約者に絡んじゃってる上に! 公衆の面前で謝罪まで要求してるわけだし。
さてはて、どうしたものか……
「おやおや、これはなんの騒ぎですか?」
「「「「「「「「っ!!」」」」」」」」
突如として介入してきた声に、颯爽と現れた人物に野次馬をしていた冒険者達が息を呑む!
それもそのはず!!
「貴方は……」
腰まで伸びた金の髪と瞳、左右の腰には2本の剣。
「やぁ、可愛らしいお嬢さん」
Sランク冒険者が1人! 〝千剣〟ミルバレッド
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