第16章 集結編

第287話 思った矢先に

「っと、いうわけで……やって来ました! 冒険者ギルド本部がある都市アバンっ!!」


 フラン先輩とオネットさんがオルガマギア魔法学園に現れた騒動から早1ヶ月。

 オネットさんから伝えられた招集日は明日だけど、前乗りして遊そ……こほん! 英気を養わないと!!


 明日はここアバンに、冒険者ギルド本部に全てのSランク冒険者が集結する……予定なわけだし!

 まぁ実際のところ、個性の塊であるSランク冒険者の内何人が来るのかは不透明だけど。


「お嬢様! いきなり走られると危ないですよっ!!」


「ソフィアお姉様と旅行……!!」


「では、私は先にホテルに向かって、チャックインとお荷物を預けて参りますね」


 誰にいわれるでもなく、自分から率先してホテルにチェックインして荷物を預けてくるって……いつものことながら、ウェルバーが完全に有能な執事にしか見えない。


 王位継承権を放棄したとはいえ、歴とした王族! 第二王子殿下なのに……

 まぁでも、確かに第二王子であるウェルバーも、王族じゃなくて一執事にしか見えないけど。


「ソフィー、迷子にならないようにね」


 フィルもフィルで、王子様にはとても見えない。

 いやまぁ、確かに容姿は憎たらしいほどに整ってて、今は仮面をつけてないからめっちゃ周囲の視線を集めてるけども。


 四大国が一角にして、帝国と並んで超大国と称されるレフィア神聖王国の第一王子とはとても思えない。

 というか、迷子ってっ! 私をなんだと思ってるんだ、失敬なっ!!


 走ると危ないっ! って心配してるファナもだけど、フィルも結構私のことを子供扱いする節がある。

 ファナはともかく、フィルとは同い年なのに……ここは一度、ビシッといってやる必要があるわ!


「ルミエ様! ルミエ様もなんとかいってやって……」


「ふふふ! はしゃぐソフィーは、何度見ても可愛いわ〜!

 またコレクションが増えてしまうわね」


 ……うん、まぁいいや。

 なんかコレクションとか不穏な言葉も聞こえた気がしたけど、今は触れないでおこう。


 しかし……今回は全てのSランク冒険者が招集されるってことは当然〝剣帝〟と称されるSランク冒険者であるエレンお兄様も招集されてるわけで。

 エレンお兄様の招集に便乗して、アバンに旅行に来たっていう設定で来たから仮面をつけてないわけだけど……


「うん」


 我ながらなかなかにすごいメンツだわ。

 今回一緒に来てるのはトリニティのパーティーメンバーであるフィルとルミエ様。

 それにファナとミネルバとウェルバーの5人。


 私を含めて6人のメンバーなわけだけど、この6人のうち2人が王族! さらに2人が準王族って……

 しかもルミエ様は神災級に位置する存在だし、ファナもマリア先生が認めた人類最高峰の回復魔法のエキスパート!


 権力的にも武力的にも、色々と今の私達の一団はヤバイんじゃないだろうか?

 かなり目立っちゃってるけど……これなら平穏に旅行を楽しめそうだわ!!


「おい、お前っ!」


「さて! ミネルバ、あの屋台に行ってみましょう!!」


 ふふふっ! ここはお姉様として、妹であるミネルバをリードしてあげないと!!


「おい! 聞いているのかっ!?」


 明日の招集がどんな要件なのかはわからないけど……みんなでの旅行を心ゆくまで楽しもうっ〜!!


「いい加減にしろよっ!?」


「あの……お姉様」


「ん? どうかしましたか?」


「さっきから、その人がソフィアお姉様に話しかけていらっしゃいますよ」


「えっ?」


 まさかさっきから後ろで騒いでる人って、私に話しかけてたの?

 しかし私に話しかけてるって、いったい誰が……


「ふむ」


 全然知らない少年だわ。


「えっと、私になにかご用ですか?」


「っ〜! ふざけやがって!!

 ふん! まぁいい、喜べ! お前にはこの僕と一緒にランチに行く栄誉を与えてやろう」


「……はぁ」


 平穏な旅行を楽しもうと思った矢先にこれだよ。

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