第286話 もう1つ

「ふふふ、美味しいですか?」


「は〜い! ソフィーちゃん、あ〜ん」


「……」


 気まずい。

 公爵令嬢にして未来の王妃たる私からしても、ふかふかで座り心地抜群のソファーに座り。

 美味しいお茶とケーキを食べる。


 これだけいうと、天国みたいな状況だけど……私の左右に陣取って同じソファーに座っているレヴィア様とベル様。

 右隣のレヴィア様にはよしよしと頭を撫でられ、左隣のベル様にはケーキを食べさせてもらう。


 とまぁ、これはいつものことだから別にいい。

 いやまぁ普通にフィルとか、マリア先生もいるから恥ずかしいは恥ずかしいんだけども……ぶっちゃけ、もう慣れてるからそれはいいっ!


「まったく貴女達は……」


「あはは、まぁいつもの事ですからね」


「あぁ! 恥ずかしそうなソフィーも可愛いわ〜!!」


 と、とぉにかくっ!! 今重要なのはそこじゃないっ!

 問題なのは……


「「……」」


 対面のソファーに座ってるフラン先輩とオネットさん!

 とくにフラン先輩なんて凄まじい眼光でこっちを凝視……というか、睨みつけてるしっ!!


「ソフィーちゃん、こっちのケーキもいかがですか?」


「あぁ〜、やっぱりソフィーちゃんの髪はサラサラで、ナデ心地抜群です〜」


 気まずいぃっ!!

 なにこの気まずい空間っ!

 テーブルを境界線に南国と極寒! まさに別次元になってるんですけどっ!?


「うぅ……ありがとうございます」


 ケーキは美味しくいただくけども! どうしてこんなことに!!

 そりゃあ確かにレヴィア様とベル様の言葉を受けて……



『貴様らの言い分はわかったし、尤もだとと思う』


『ちょっ! フランっ!?』


『けど! それは貴様らが本当に〝悪〟じゃないという証明にはならない!!』


『それは……確かにそうですね』


『だから、この目で貴様らの事を見極めさせてもらう。

 貴様らを倒すのはそれからだ!!』



 とまぁ、こんなやり取りがあって、とりあえずこの場での正面衝突は回避できたわけだけどさ!

 だからってなんで、テーブルを挟んで対面に座って一緒にお茶することになるわけっ!?


 しかも……左右をレヴィア様とベル様に挟まれて、いつものようにお世話を焼かれちゃっちゃるから、この気まず過ぎる空間から逃げられないっ!


「さすがは最年少Sランク冒険者と言うべきでしょうか?

 ソフィーさんもなかなかですね……」


「まぁ、否定はしませんよ」


 なんの話っ!?

 フィルっ! オネットさんと悠長に話してる暇があるなら、この居た堪れない場所から私を助けだ……


「は〜い、あ〜ん!」


「あ〜ん! んん〜!!」


 さすがはレヴィア様お手製のケーキっ! 毎回思うけど、これほどの腕なら店を出しても十分に通用するんじゃ……ってそうじゃなくて!


「っ!!」


 フィル! 仮にも私も同じパーティー〝トリニティ〟のメンバーで、私の相棒なんだから早く私をこの場所から助け出してよっ!!


「なんでソフィーに睨まれてるんだろ……なんかめっちゃ理不尽な事を思われてる気がするんだけど?」


「それよりも、こそ悪魔達との関係性の続きを聞かせてくれますか?」


「っと、そうでしたね。

 さっきも説明した通り、オネットさんもSランク冒険者なら教団の事を耳にした事はあると思います」


「教団……光の使徒と名乗る連中のことですね?」


「えぇ、どういうわけかその連中にソフィーは目をつけられているみたいなんですが。

 その教団の最高幹部、十使徒を名乗る連中のとの戦いでレヴィア様とベル様に助けられまして」


「悪魔に……」


「それで色々あって、今はこの通りです……」


「その色々が気になりますが、大体の事情はわかりました」


 そうそう! それでレヴィア様とベル様は、今ではしょっちゅう一緒にお茶をする間柄になっているわけなのです!!


「さて、話は変わるけれど……貴女達がこの学園に来た理由は、この学園で強大な悪魔の気配を感知したから。

 そして、それとは別にもう1つあるんじゃないかしら?」


 もう1つ?


「……さすがは大賢者マリア様、お耳が早い。

 これでも一応、最上位機密なのですが……まったくどこでお知りになられたのか」


「ふふっ、こう見えて私もこの大陸でトップクラスの権力者。

 それでなくても、その程度の事を知ることなんて造作もないわ。

 ソフィーちゃん達に用があるんでしょう?」


「えっ? 私達はですか?」


 オネットさん達とは初対面だし、いったいなんの用が……


「冒険者ギルド統括グランドマスターより、全Sランク冒険者に招集がかけられまし。

 私達はこの地で感知した悪魔の気配を調査すると共に、その事をソフィーさん達に伝えに来たんです」

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